結局、いつも通り……?

 次回は9時と18時に更新です!( ̄^ ̄ゞ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 まぁ、正直自惚れていました。

 だって、今まであんなに「好きだ!」って言っていたから、初恋相手だとバレた時に何か言われるんじゃないかって。

 それこそ、勢いのまま告白されるかも……なんて、自惚れて一人かなり恥ずかしい気持ちになったのはここだけの話。

 いや、確かにもし仮に告白されても、


(でも、冷静に考えて……相手は綾瀬だしなぁ)


 誰にでも優しく、誰からも好かれるカーストトップの美少女。

 そんな女の子に告白されるなんて、いくら初恋相手だとしても考え難い。

 綾瀬は綾瀬。俺との関係は、発覚しても今まで通りだろう———って、思っていました。


「……お嬢さんや」

「ん? なーに?」

「今から俺達は、綾瀬プレゼンツのアニメを視聴するんだよな?」


 それから少しして、俺達はお菓子と飲み物を用意して本来の目的であるアニメ視聴をすることになった。


「うん、『ぬるぬる☆乙女! 刺殺殴殺編』を観る」

「なんだって?」

「あ、ちなみに『燃殺撲殺編』もちゃんと持ってきたから」

「なんだって?」


 随分と猟奇的なアニメもあったもんだ。


「……まぁ、アニメのタイトルそれでいいのかやら、よくそんなタイトルに魅かれたなとかはこの際置いておこう」


 そう、問題はそこではなく―――


「なんで、……?」


 テレビがしっかりと観られるように、俺が対面のベッドの上に座るのは普通だと思う。

 しかし、問題は何故綾瀬がいつも座っている椅子やテーブルの前に腰を下ろさず、俺の膝の上に乗っているのか、ということだ。

 座高は俺の方が高い。テレビが観えないことはない。

 ただ、振り向かれる度に端麗な顔が眼前に迫り、視線を下げれば着崩した制服から程よく育った谷間が見えてしまう。

 さらには、鼻腔を擽るような甘い匂いと柔らかすぎる感触がダイレクトに襲ってきて……なんというか、今何故か「どうして?」という気持ちをかなり抱いてしまう構図となってしまっていた。


「えー、別によくない? いっくん、私重くて嫌?」

「嫌とかそういうわけじゃ───」

「いっくん、ピース♪」


 パシャ。


「今回もありがとう」

「ふぅ……いっくんを黙らせる方法を私は見出だしてしまったぜ」


 このアングルからの写真……いつも以上にマーベラス。

 日に日にフォルダが潤っていくから、伊織くんはとても嬉しい。


「そういえばさ、いっくん」


 俺に持たれかかるようにして背中を預けてくる綾瀬が訪ねてくる。


「いっくんの好きな女の子のタイプってさ、どんな感じの子?」

「とても素晴らしいほどに脈絡がないが、どったの?」

「いや、ほら! 今まで私の話はしてきたけど、いっくんの話は聞いてこなかったし。それに、今からラブコメを観るからちょうどいいかなーって」


 あのタイトルでラブコメは流石に詐欺だろう。


「そんな面白いもんでもないぞ? 別にありきたりだし、お茶の間の笑いを掻っ攫うようなエピソードもないし」

。いっくんが「顔」、「胸」、「お尻」って言っても、私は興味深そうに頷くよ」


 なんだろう……強く否定はできないが、否定しないと俺の沽券に影響が出てしまうような要素が挙げられている。


「……意識したことはないが、やっぱり中身じゃないか? 一緒にいて落ち着く、とか楽しい、とか」

「あんなに綺麗だったり可愛い子が好きなのに?」

「それとこれとは別だろうに。だって、ずっと一緒にいるわけだろ? 多分惚れるなら、外見よりも中身で気が合うかとか、尊敬できる部分とかを見ちゃうと思うなぁ」

「ふふっ、いっくんらしいね」


 ピトッ、と。綾瀬は振り向いて俺に抱き着———待て、なんで抱き着いたんだ、綾瀬こいつは? そろそろ心臓がバクバク鳴っていることに気づかれないか心配だ。


「あとは、そうだな。俺が奥手だからちょっと攻勢が強い子には意外と弱いかもしれん」

「ふぅーん……」


 俺がそう言うと、抱き着いたまま何やら綾瀬は考え込み始める。

 すると、少しして。

 ようやく綾瀬は俺から離れたと思いきや、急に立ち上がり―――


「……へっ?」


 ───

 そして、俺の腹部へとまたがり、


「こういうこと、かにゃ?」


 小悪魔のような、蠱惑的な悪戯っぽい笑みを浮かべたのであった。


「こ、こういうことっす……」

「っていうかさ、いっくんさっきから心臓の音激しいよね」

「ふ、不整脈と出血多量による弊害だと思われ……ッ!」

「後者だったら、私は急いで野生のドクターを呼ぶよ」


 気づかれていたこと、腹部にまたがれていること。

 それらが合わさり、せっかく平静を装おうとした顔が一気に真っ赤に染まる。

 そして、綾瀬は……どうしてか、俺の顔を見て嬉しそうに、こう言い放ったのであった。


「私さ、恋愛初心者だけど……こう見ても、ちょー攻勢強いんだぜ♪」



 ♦♦♦



(※美柑視点)


 我ながら大胆なことをしているとは思う。

 柄にもない……とまではいかないけど、をしている自覚はある。

 いきなりベッドの上に押し倒して、お腹にまたがるなんて……正直言うと、今結構はずい。


(けど、仕方ないじゃん)


 私は激しく脈打っている心臓の鼓動を聞きながら、顔を真っ赤にしたいっくんの顔を見下ろす。


(私からしたら、もういっくんは男友達じゃなくて異性だし♪)


 ―――嬉しかった。

 初恋相手が見つかって、あの時のお礼がちゃんと言えて、その相手がいっくんで。

 まぁ、我ながら単純でチョロいとは思う。

 男友達が初恋相手だって知った途端、こんな気持ちになっちゃってるんだし。


(でも、今思ったら……初恋相手が見つからなかったら、多分いっくんを好きになってたんだよねぇ)


 だって、いっくんは他の男の子とは違う。

 優しくて、一緒にいると落ち着いて、私の外見よりも中身をしっかり見てくれる。なんだったら、ちゃんと褒めてもくれる。

 確かに綺麗で可愛いものに目がないところはちょっとアレかもしれないけど、そこが仕方ないというか可愛く思えちゃう。


 だから、いっくんが初恋相手だって知った時は妙に納得したというかなんというか―――


『あの時は、自分でも当たり前のことをしただけだし……その程度で、今の綾瀬に「好き」って決めつけてほしくなかったんだよ』


 私のことを慮ってくれる。身を挺して守ってくれたことを「当たり前だ」って言える。

 そういうところが、やっぱり私は惹かれちゃうんだ。

 でも、今もう一個言いたかったことを言っても、きっといっくんは困る。

 それどころか、始める前に勝負が終わっちゃう気がする。なんとなくだけど。


(……覚悟しててね、いっくん)


 今、いっくんの好みはちゃんと聞いた。

 あと、私がするのは―――


(全力で、私はいっくんに好きになってもらうようアピールする!)


 いっくん、私の片想い……伊達に長くないよ?

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