第33話
「実際、どうやって天枷の誤解を解けば良いんだ?」
バイト終わりの自室にて、アイリスに天枷への誤解の解き方を相談することにした。
アイリスは長いツインテールをいじりながら答えてくれる。
『手っ取り早いのは、ありのままを直接伝えることだけど……』
「『遠足の日のことなんだけど。好きな人を傷つけるなってやつ。あれは風見のことを言っていて、俺のことじゃないんだ』って言うの?」
『センスないわねー』
「だよなー」
自分で言っててセンスがないのがわかってしまう。こんなこと急に言われたらドン引き確定だろ。
「誤解を解くセリフは後で考えるとして、LOINを送るとかどう?」
『噂されている男の子から急にLOINが来たら、既読すら付かずにスルーされるかもね』
「誤解を解くLOINなのに?」
『あんた、ほんと女心がわかってないわね』
はぁと壮大にため息を吐かれてしまう。
『いい? 幼馴染のどちゃくそかわいい女の子に誤解を解くわけじゃないのよ』
葵の奴、どちゃくそかわいいっての気に入ってるのかな。
「距離感ってやつ?」
『そう。距離感』
「アイリスからすると、俺と天枷の距離感ってどんな感じに見えるんだ?」
『私に言わせると、浅瀬も浅瀬。潮干狩りもできないくらいに浅瀬よ』
「最早砂浜ってか」
『そうそう。浅瀬にすら到達していない。ちょっと一緒に買い物に行ったからって調子に乗らないことね』
「ひでー言われようだ」
『天枷さんとあんたの関係はまだまだ浅い。そんな関係性で、今の状態のままLOINを送ってもトークを開かない可能性の方が高いわよ。仮に開いて誤解を解く文章を読んでも、どう返事してかわからずスルーされてしまうかもしれないわよ』
「女心は複雑だなぁ」
『少なくとも、あんたみたいに単純じゃないわね』
「うるせ。ほっとけ」
そんなことは自分でもわかってるっての。
「じゃあ電話は?」
『LOINと同じでスルーされる可能性が高いわね。それに電話はLOINよりハードルが高めだから、電話ならLOINの方がマシよ』
「ええー。じゃあ、どうすれば良いんだよー」
八方塞がりの状況で悩んでいるところで、呆れた様子のアイリスがアドバイスをくれる。
『今回の場合、誤解を解くセリフが大事なんじゃなくて、天枷さんと自然に一緒になれるのがキーだと思う』
「自然と二人ったって、俺と天枷の関係性は浅瀬にも到達していない砂浜だ。そんな関係性でどうすれば良いんだよ」
『そうね……遠足みたいな学校イベントはまだ先だろうし……うーむ……」
アイリスもアドバイスはくれるが、中々良いアドバイスがないみたいだ。
『学校イベント……そういえば、中間テストが近いんじゃない?』
「だああ……アイリスまで中間とか言ってくんな。吐き気がする」
『あんた、どんだけ勉強が嫌いなのよ』
「好きな奴とかいんの?」
『私は別に嫌いじゃないけどね』
「あ、そっ」
葵は成績優秀だから、そりゃ苦しくはないだろうな。こんなアプリも作っちまうくらいだし。これだから成績優秀な奴は……。
『中間テストが好きとか嫌いじゃなくて、それを逆に利用すれば良いんじゃない?』
「中間を利用? どうやって?」
『幼馴染に協力してもらいなさいよ』
既に協力してもらっているんだが、とかいらないことは言わない方が良いよな。
『幼馴染に頼んで三人で勉強会を開いたら良いじゃない』
「勉強会ぃ? なんでわざわざそんな拷問を受けなきゃならん」
『わがまま言うなー』
「で、でもでも、葵と天枷ってそんなに仲良くなかったんじゃない? たまに話してるのは見るけど、勉強会を開くほどの仲って訳じゃないだろ」
『葵も噂の中心になっているんでしょ。だったら噂されている同盟を組みやすいわよ。それに、女子が女子を誘うのは随分とハードルが低いし』
「そりゃ、まぁ、男が女を誘うよりかはハードルは低いだろうけどさ。葵にそんなことを頼んで良いもんかね」
『大丈夫。幼馴染ならどちゃくそ優しいから、きっとOKしてくれるはずよ』
あー、やべー。勉強会をする流れになってらー。
えー、とか、あうう、なんて悩んでいると、アイリスがビシッと指差してくる。
『あんが勉強嫌いなのは知ってるけど諦めなさい。天枷さんの誤解を解くために勉強会を開くのよ!』
完全に勉強会をする流れになってしまった。
「……しょーがない。天枷の誤解を解くためだ」
こうして、俺は葵と共に天枷の誤解を解くための勉強会を開く計画を立てた。
あとから気が付いたけど、これって学園の二大美女と一緒に勉強会ってことになるから、俺への噂が更に悪化しないか? 大丈夫だろうか……。
いや、天枷の誤解を解くことが重要だな。うん。
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