第10話
女子班の大半が風見と一緒になりたがるもんだから、男女がっちゃんの班はくじで決めることになった。
風見の班はくじの結果、女バスグループと一緒になることとなった。風見へ、きゃーきゃーと黄色い声を出さないゴリゴリの運動部であるため、バランスは取れているよね。風見よいしょ班になっていたらと思うとゾッとするわ。
俺達の目の前には天枷と武田と井上が目の前に座っている状態。こちらはサッカー部の風見蓮に、野球部の岩本豪気。
あっれ? んんっ?
これ、風見よいしょ班じゃないけどさ、ゴリッゴリの運動部班じゃね? 俺だけ場違いかっ。
しかしまぁ、最近はなにかと天枷と縁があるなぁ。こんなジェネリックぼっちが学園の二大美女と同じ班なんてバチでも当たんないだろうか。
そんなことを思っていると天枷と目が合う。彼女は、ニコッと軽く微笑んでくれた。
いや、この微笑みは惚れた腫れたではなく、単純に目の保養になるわ。美術館で絵画を見ているような芸術を感じるね。
ちなみに、このクラスは男子の方が少ないため、必然的に女子だけの班が一つできてしまう。葵は女子だけのグループになってしまったみたいだ。
ともあれ、これで無事に我が六組の六人六班が完成。六ばっかだね。
「よし。男女の班が決まったな。次は班同士で役割分担を決めてもらう」
役割分担、だと……?
「男女共にひとりずつ、班長と調理係と準備係を決めてくれ」
面倒臭そうな話し合いを持ちかけてきやがったな、ちくしょう。こんなの決めたところで、やらないやつはやらないんだから決めたってしょうがないと思うのは俺だけなのだろうか。
「先生。調理係はなんとなくわかりますが、班長と準備係ってなにをするんですか?」
どこかの班のクラスメイトが律儀に手を挙げて質問を投げていた。
「良い質問だ。班長は全体の指揮。調理係はバーベキュー当日に調理。準備係は当日までに食材を用意する」
ええええええ!
クラスメイト達のブーイングが鳴り響く。
そんなの現地で用意してくれよ。
そーだそーだ。
部活あんのに無理だ。
こっちはバイトあんだぞ。
そんなブーイングが鳴り響く中、新島先生が悔しそうな顔をする。
「お前達の言い分はわかる。めちゃくちゃわかる。私も今時そんなことさせるとかありえないと主張したが、私みたいなキャピキャピギャルの言うことはおっさん教員には通じなかったんだ。許せ」
くっ。とか心底悔しがってるが、どこにキャピキャピギャルがいるのか問いたい。
しかしまぁ、決まったことは仕方がないか。
誰がハズレの準備係を引くかというと……。
「準備係は福井で良いよなー」
ほい、きた。イケメンの鶴の一声。このジェネリックぼっちに来ると思いましたよ、どちくしょうが。
「おい、待てよ蓮。流石にそれは……」
岩本って普通に優しいな。なんで風見と友達してんだろ。
「あ? 別に良いだろ。俺ら部活あるし」
「そうだけど、こいつにだって用事があるかもだし」
「え、なに? 福井用事あんの? 部活何部?」
うわー。高圧的な部活マウント取って来やがった。これだからイケメンリア充は困る。今までそれでなんでも通って来たって感じでムカつくなぁ。
しかしここまでスムーズに班が決まったのはこのイケメンのおかげでもあるわけだし、ここで反抗しても陽キャのオラオラオーラでかき消してくるだろう。準備係は面倒だが、ここで言い争う方がもっと面倒だ。
「部活もしてないから、準備係で良いよ」
「ほら、良いってよ」
「福井。お前、良いのか?」
「豪気うざいって。福井が良いってんだから良いんだよ」
「……ならまぁ、頼めるか?」
「へーへー。任されました」
男子の方は簡単に準備係が決まったが、女バスグループは少しだけ揉めている。
そんな様子を見て風見が爽やかに言ってのける。
「こっちは全部決まったけど、そっちはまだみたいだね」
あれ? いつの間に全部決まったの? ま、別にいっか。俺はどうせ準備係だし。
「あ、うん。ごめん」
「ウチらバスケ部あるし、中々買い出しって難しくて」
武田と井上の言葉はなんとなくわかる。
忙しいじゃなくて難しい。それってのは、部活を休むのが難しいってこったろ。
顧問の新島先生に事情を言えば簡単に休めるのだろうが、おそらく弊害は天枷の言っていたやっかいな先輩だろう。
やっかいな先輩が、「そんなので休むなんて言い訳にならない」とかなんとか言ってくるってこったろうな。お察しだわー。
「いいよ。準備係は俺だけで十分だ」
「おい、なにを勝手に決めてんだ。班長は俺だぞ」
やっぱ男子の班長はイケメンくんなのね。つうことは男子の調理係は岩本か。
「まぁまぁ風見。ここで決まらないよりはいいだろ」
「ちっ。気安く呼ぶなよ陰キャが」
あーら、急激に機嫌が悪くなっちゃった。まだまだ反抗期継続中かな?
「福井。良いのか?」
やっぱり野球部の岩本には話が通じるみたいだな。
「別にひとりもふたりも変わらないから良いって。運動部は忙しそうだからそっちを優先してくれよ」
逆にひとりの方が楽だしな。とか思っている時点で俺は根っこがぼっち気質なんだろうなと自覚して悲しくなっちまう。
「私、準備係する」
セルフで悲しんでいるところに、天枷が小さく手をあげてそんなことを言ってくれる。
「りー。でもあいつは遠足の準備だからって理由で休んでもうざいこと言ってくるよ?」
「特にりーは目を付けられているんだから、私が行くよ」
「大丈夫。私なら先輩の言葉を適当に流すからさ」
どうやら、俺の予想は当たったみたいだな。弊害はやっかいな先輩か。
「天枷、別に無理しなくても良いんだぞ」
「ううん。大丈夫。一緒に買い出し行こうね、福井くん」
エンジェルスマイルを頂きました。こんなもん、いくらもろてもええですからねぇ。
「ちっ。ほんと、陰キャが調子乗んなよ……」
エンジェルスマイルのお釣りはイケメンの睨みを頂きました。
あれ、もしかしてイケメンくんは学園の二大美女を狙っておいでで? そんなところで俺と天枷が一緒の準備係になったもんだから怒ってる?
そうか。人数合わせの陰キャが惚れた女と一緒になったら気に食わないってところか。
なるほどなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます