新たなる希望



カリスは少年と共に歩き出した。

少年の名前は「エリオ」と言った。彼は、カリスと同じくこの荒廃した世界に生きる一人の若者だが、その目には何か違うものが宿っていた。それは、絶望に満ちた世界の中で、確かに光を感じさせるようなものだった。


エリオはカリスに対して、無邪気に語りかけてきた。


「ねえ、カリス。君は、この世界がどうなると思う?」


カリスは答えるのをためらった。

この世界には、もはや未来など存在しないと思っていたからだ。生きるために必死で、今を生きることが精一杯だと感じていた。しかし、エリオの目には、どこか希望を信じているような光があった。それが、カリスには奇妙に感じられた。


「どうなるか、誰にも分からない。だが、今はただ生きることが大事だ。」


そう答えると、エリオはにっこりと微笑んだ。


「じゃあ、僕たちがこの世界を変えたらいいんじゃない?」


その言葉にカリスは思わず立ち止まる。

「変える?」

「どうして?」

「だって、もし誰かが力を持っていたら、何かを変えられるかもしれないでしょう?」


その言葉に、カリスの胸にかすかな衝撃が走った。

彼はその瞬間、エリオの言うことが現実となるかもしれないという、強烈な直感を覚えた。だが、それは同時に大きな疑問でもあった。


「力を持っている者が世界を変える。それはいい考えだが、その力をどう使うかが問題だ。」


カリスはそう言うと、少し黙り込んだ。彼が言いたかったのは、力がどれほど強くても、その使い方を誤れば世界を破滅に導くことになるということだった。しかし、エリオはその言葉を真剣に受け止める様子ではなく、むしろ興味深げに目を輝かせた。


「僕は、そういうことを心配しているんじゃないよ。だって、誰かが何かを変えるために動かない限り、何も始まらないでしょ?少なくとも、僕は変えたいんだ。」


その無邪気でありながらも力強い言葉に、カリスは再び驚き、心の中で少しずつその存在を認め始めていた。エリオには、ただの希望だけではない何か、強い意志のようなものが感じられた。


だが、カリスにはまだ疑念があった。

「君は本当に、何かを変えられると思っているのか?」


エリオは軽く肩をすくめ、笑った。


「誰もが変えられると思うよ。だって、僕だって普通の人だからね。」


その言葉に、カリスはまた一歩歩みを進めた。

そして、二人は再び歩き出した。



二人が辿り着いたのは、かつて大きな都市があった場所だった。

今ではその都市の跡地には、無数の廃墟と倒壊した建物が広がっている。かつては「ぷれいやー」の力で栄え、繁栄していたこの地も、時と共に朽ち果て、ただの記憶だけが残されている。


「ここに何があるんだ?」

カリスは尋ねた。

エリオはしばらく黙ってから答える。


「ここには、かつての「ぷれいやー」の遺物が眠っているんだ。力の源、魔法の道具、技術、全部……。でも、誰も手を出さない。」


カリスはその言葉を聞いて、胸の奥で何かがひっかかるのを感じた。この場所にある遺物は、もしかしたら、エリオが言ったように、世界を変えるための手がかりになるかもしれない。しかし、それは危険を伴うものでもあるはずだ。


「遺物に触れた者は、必ず何かしらの代償を払うことになる。力を求めすぎれば、破滅を招くことになるんだ。」


エリオはカリスの言葉を真剣に聞いたが、どこか楽しげに答えた。


「それでも、やらなきゃ意味がないんだよ。だって、このまま何も変わらないなら、ずっとこの世界は終わったままだ。」


その言葉に、カリスは再び強く心を揺さぶられた。

エリオは何かを知っている――そう感じた。しかし、それが何なのか、カリスには分からなかった。


だが、何かが確かに動き始めていた。世界は、彼らの手の中にあるかもしれない。

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