かつてのゴブリン文明:ザルヴァス超構造体



アークコアから放たれる光が徐々に形を成し、空間に広がった。それは星々が煌めく宇宙空間の映像だった。だが、その中心に映し出されたのは、巨大な黄金の機械都市。無数のゴブリンが都市を駆け巡り、精密に設計されたメカニズムが生み出す光景は、まるで神々が築いた天上の楽園のようだった。


グリードは目を見開いたまま立ち尽くしていた。

「これが……俺たちの故郷だったのか?」


アークコアはさらなる情報をグリードの脳に直接送り込む。その内容は驚愕の連続だった。



数千年前、ゴブリン族は他のどの種族よりも高度な文明を築いていた。彼らは惑星ザルヴァスを完全に制御可能な巨大構造体――**「超構造体都市」**に変貌させ、星そのものを宇宙船として運用していたのだ。その技術力は、星系間を自由に移動し、宇宙資源を活用するレベルにまで達していた。


彼らの主たる発明は、**「ナノマシンによる進化制御」**だった。この技術により、ゴブリン族は個々の身体能力や知性を自由自在に拡張し、寿命すら制御できるようになった。特に注目すべきは、「進化」の概念を完全にテクノロジーで再現したことだった。自然淘汰ではなく、自らが望む姿へと進化する能力――それが、かつてのゴブリン族を宇宙の覇者へと押し上げた要因だった。



しかし、その繁栄が彼らの破滅を招いた。ゴブリン族は自身の技術力をもって、宇宙に存在する未知の力――他種族が「神」と呼ぶ存在たちを研究し、その本質を解明してしまったのだ。そしてゴブリン族は気づいてしまった。


「神々とは単なる高次元の情報存在であり、物理法則に基づくエネルギー制御で操作可能な存在である」と。


これを知ったゴブリン族は、神々に挑戦するという前代未聞の行動に出た。超構造体都市ザルヴァスを兵器化し、神々の領域へ侵攻を開始したのだ。


彼らは「神殺し」の兵器、**「デウス・ブレイカー」**を完成させ、次々と神々をその座から引きずり下ろした。ゴブリン族は「絶対者をも凌駕する種族」として宇宙にその名を轟かせた。



しかし、神々は黙ってはいなかった。高次元エネルギーを操作する彼らは、ゴブリン族を超構造体ごと滅ぼすために、自らの存在を「封印システム」として再構築した。ゴブリン族の進化制御技術は奪われ、ザルヴァスはブラックホールの中心に封印された。


その後、生き残ったわずかなゴブリンたちは、技術を忘れさせられ、劣等種族として銀河の底辺へと追いやられる運命を背負わされたのだ。



アークコアが語るゴブリン族の栄光と悲劇に、グリードの胸は高鳴った。だが、同時に脳裏に浮かぶのは「神々への復讐」や「栄光の復活」ではなかった。彼が思ったのはただひとつ。


「俺がこの技術を使えば、ゴブリンたちをもう二度と虐げられる存在にはさせない。」


だがその瞬間、アークコアがさらに激しく光り輝いた。コア内部のシステムが再起動し、グリードの目の前に一つの選択肢を突きつける。


「古代のゴブリン文明を再建するために、ナノマシンの力を君の体に直接適用するか?」


その選択は、グリード自身の命をも変えるものであり、彼を「ゴブリンの王」ではなく、「全く新しい存在」へと導くものだった。

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