6
「なんか今の質問、すげぇ嬉しい」
「へ?」
「俺のこと、気になったってことだろ?」
「……」
「今はそれだけでも十分だから」
ポンポンと優しく頭が撫でられる。
こんな風に独占欲を丸出しにされると、本当におかしな思考になりそうだよ。
「そういう顔されると、少しは脈あるって思っていいの?」
「ふぇっ?」
「『嬉しい』って顔に見えんだけど」
「っ……」
そんな顔に出てた?!
『好き』って言われたり『誰にも渡したくない』だなんて言われたら、恋愛に興味がない私でも嬉しくなるよ。
**
体育祭当日、雲一つない秋晴れの朝。
秋の陽に照らされた影が長く揺らめく。
マイク関連の配線準備があるため、私はいつもより1時間早くに自宅を出た。
「おはよう、小森」
「おはよ」
当然のように『明日は何時?』と昨日聞かれ、『7時に家を出る予定』と伝えてあったから、いつもより1時間も早いのにもかかわらず、上條くんは人形町駅の改札口前にいた。
「今日の髪、可愛いね」
「っ……、お母さんが編み込んでくれたの」
「へぇ~」
これは、天然?
それとも、たらしなの?
朝から、さらっと嬉しくなるようなことを口にするんだから。
ホームで電車が来るのを待っていると、彼からの視線を感じた。
「何?」
「あのさ~、クラスメイトとしてじゃなくて、小森個人として……今日一日俺の応援して」
「……」
「ダメ?」
「へ?……あ、ううん、応援するよ、もちろん」
ほんの少し赤らめた顔で呟かれた。
いつだって余裕そうな顔をしてる彼が、威嚇する以外にこんな表情を見せるだなんて。
私の返答が嬉しかったのか、照れた顔を隠すために視線が逸らされた。
「ずっと本部席?」
「ううん、担当以外はクラスの所にいる予定だけど」
「そっか」
ちょっとでも近くにいたいのかな?だなんて、勝手に思考が暴走してしまう。
最近私の脳みそ、夏バテで蕩けてるのかも……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます