廉とまどかは肩を並べて正門を出て、駅へと向かう。


「この間言ってた……」


『俺が、小森を好きなんだけど』という彼の言葉がずっと気になっていて、まどかは俯き加減で何て聞けばいいのか、言葉を選んでいると。


「あれは嘘じゃない。俺、小森のことが好きだから」

「っ……」

「小森が俺のことを好きかどうかは気にしてない」

「……(へ?)」

「今は好きじゃなくても、好きになって貰えるよう努力するつもりだし」

「っっ」

「俺以外の奴が小森に近づけないように、結界張るから、俺」

「結界?」

「ん、結界」


 再び爆弾発言とも思える言葉を耳にしたまどか。

 隣りを歩く上條くんは、色気のある笑みを浮かべ、まどかの頭を優しく撫でた。



「えっ、……降りないの?」

「ん」

「何か、用でもあるの?」

「ん。小森を送り届けるミッション遂行中」

「は?……えぇっ」


 いつも降車する虎ノ門ヒルズ駅に到着しても上條くんは降りず、まどかをサラリーマンから守るみたいに目の前に立つ。

 仄かに香るミントの香りと間近から見下ろされる視線で、まどかの鼓動はけたたましく鳴り響いていた。


**


 翌朝登校するために、自宅から程近い最寄り駅の人形町駅に着くと。


「ッ?!」

「おはよ」

「……おはよう。いつからいるの?」

「30分くらい前?」

「えぇ~っ?!」


 改札口に上條くんがいた。

 朝から目立ち過ぎ。

 普段は見かけないイケメンが突如現れたからだと思うけれど、OLや学生の視線が彼に向けられている。


「長瀬はどこの駅?」

「……隣りの駅」

「乗る車両とか決まってんの?」

「……大体は」

「じゃあ、俺もそれに便乗する」

「っ……」


 今は何を言っても無理そうだ。

 学校では絶対に見せない、爽やかな笑顔で見つめられては……。

 私の何がそうさせるのかは分からないけれど、その笑顔、心臓に悪いよ。

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