極上の独占欲

 朝晩の気温がだいぶ過ごしやすくなった10月。

 まどかが通う高校では、体育祭が行われる。


 都内有数の進学校だというのに、意外にも毎年体育祭は盛り上がる。


「では、今からメンバーの割り振りをしますので、黒板の希望箇所に名前を書いて下さい。定員を超える箇所は、じゃんけんなりくじ引きで決めること」


 LHRで体育祭の出場メンバー決めを行うことになり、クラス委員のまどかはいつもの通りに手際よく進めている。


 記入時間になり、次々と黒板に名前が記されて行く。


「まどかは見学だよね?」

「……うん。まだドクターストップ中だしね」

「じゃあ、私は美紀ちゃんたちと相談して名前書くね」

「うん、和香ごめんね」


 肩の脱臼自体は治っているが、幼少期に同じ箇所を2度も脱臼したことがあるまどかは、家族と相談して運動系を控えるようにしている。

 脱臼は癖になることがあるからだ。


**


 放課後、体育祭実行委員の会議(クラス委員も含め、顔合わせ)に参加したまどかは、いつもより1時間半ほど遅くに昇降口へと。


「上條くん?」

「委員会終わったのか?」

「あ、……うん」


 玄関の下駄箱横に凭れるようにして立っていた彼。

 まどかの姿を見つけて、手にしていたスマホをポケットにしまった。


「もしかして、……待っててくれたの?」

「ん。この時間だと、電車混むから」

「……え?」


 数か月前に遭ったあの痴漢が、フラッシュバックになって……。

 いつもは和香がいるし、委員会の時は隣りのクラスの中島さんがいるから、思い出すこともなかったけれど。

 今日は中島さんが風邪で休んでいるから、必然的に一人で帰るものだと思っていた。

 もしかして、中島さんが休みなのを知っていたの?

 それとも、和香に頼まれた……とか??


 今までだって、今だって。

 上條くんはいつだって、さりげなく手を差し伸べてくれる。

 ただのクラスメイトなのに……。

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