冷淡男子の上條くんは全振り初カノにご執心

４

　夏休みのとある日の午前9時半。

　東京駅の丸の内南口前で待ち合わせたまどかと廉。

　まどかは前日に和香にコーディネートして貰った恰好で駅へと向かう。

　黒地に小さなドット柄のシフォンキュロットにオフホワイトのノースリーブシャツ。

　夏らしく少し透け感のある爽やか且つ上品な甘コーデ。

　冷房対策に薄手のカーディガンをしっかりと持参。

　待ち合わせ時間の10分ほど前に到着すると、既に上條くんがいた。

「おはよう」

「っ……おはよ」

　廉はブラックデニムにVネックのTシャツを合わせたシンプルな格好。

　けれど、長身なうえ完璧とも言える端正な顔立ちは改札口へと向かう女性の視線を掻き集めている。

　制服姿もカッコいいが、私服は割増しでカッコよく見える。

　まどかは思わず視線を逸らしてしまった。

「結構待った？」

「いや、さっき来たとこ」

　スマホを見ていた彼は、改札口へと向かう人々の邪魔にならないようにまどかの手を掴み、人波から避けるように少しずれた。

「上條くん」

「ん？」

「言い忘れたんだけど……」

「……何？」

「T☆HOシネマズの支配人なの、……父親」

「へ？」

「すぐそこのT☆HOシネマズ日比谷にいる」

「は？」

「会ってく？」

「あ……いや……うっ……ん～」

　突然何を言い出すかと思えば、父親に会うかどうかと聞かれても……。

　それって、どういう意味？と、頭を捻る廉。

「とりあえず、歩こうか」

「……ん」

　まぁ、深い意味はないのだろうと踏んだ廉は、なるようになるかと肝を据えた。

　夏休みの東京駅は混雑していて、キャリーケースを引く人も多い。