「恋、してるでしょ」

「……ッ?!」

「眼つきが柔らかくなったし、俺でも近づきやすくなったもんね」

「俺、そんなに近寄りがたいオーラ出してました?」

「うん、出まくりだったよ?近寄ったら、ぶっ殺す!みたいなドライアイスばりの冷気を纏ってた」

「フフフッ、何すかそれ」


 確かに周りをうろつくな!的な雰囲気はわざと出してたけど。

 男も寄せ付けないほどだったとは。


「どんな子なの?」

「え?」

「廉君が気になる子」

「あ~、……頑張りすぎて空回りしてる感じの」

「真面目ちゃんなんだ」

「……はい」

「連絡先とか交換したの?」

「……俺の連絡先は教えてあります」

「おっ、やるじゃん」

「でも、一度も連絡ないですけど」

「ぉおっ!廉君を振り回すタイプかぁ~」

「さっきまささん(荻窪おぎくぼ 雅也まさや)が言ったみたいに、その子にも近寄るなオーラ出てると思うんで」

「あーねー。まずは、その結界解除しないと無理だよね~」


 ご贔屓の芸能人の相談にも乗るという彼は、話し上手聞き上手で、朝陽も凄く信頼してる人。

 個室というのもあって、秘密保持は勿論のこと、職業柄様々な人の相談を受けて来た実績が物語っているようだ。

しかも、ヘアスタイリストとしての腕も超ハイレベル。大物俳優がご指名で足繁く通うというのも納得だ。


「ここのサロンのクーポンあげるから、その子に渡してみ?少しは話すきっかけになると思うし」

「雅さんに紹介するってこと?」

「あ、いや、……担当は俺じゃなくても他のスタッフでもいいしさ」

「フフッ、……渡す機会があれば」

「頑張んな~、めっちゃ応援するから」


 会話しながらでも鋏さばきは見事で、ケープの上に切られた髪がパサパサッと落ちてゆく。


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