ナイトのお出まし

1

 真っ青な空と向日葵のコントラストが映える8月。

 夏休みに入り、2週間が経った、とある日。

 

「廉君、髪伸びたね~」

「……そうですね」

「少しカットしてもいいかな~?」

「……いいっすよ」

「ぉお、じゃあ、とびきりのイケメンに仕上げるからね~」


 朝陽は不定期で雑誌モデルの仕事をしていて、その時に知り合ったヘアメイクさんが経営するヘアサロンに、朝陽と廉はいる。

 著名人も足繁く通うというこのサロンは、完全個室になっていてプライベートが配慮されている造り。

 朝陽の紹介で、廉もこの店のカットモデルをしているのだ。


「ホント、相変わらず廉君も朝陽君もイケメンだよね~」

「……そんなことないっすよ」

「彼女とかいないの~?」

「……いないっすね。朝陽はあえて作らないようにしてるみたいですけど」

「もったいなーいっ!俺なんて、高校生くらいの時は、女子高や女子大の前で出待ちして告ったこと何度もあるよ~」

「マジっすか」

「マジまじ」

「その子と上手くいったんすか?」

「うーん、成功率2割ってとこかな」

「低っ」

「だろ?」

「だからさ、行動してても低いんだから、何もしなかったら何も始まらないってことだよ」

「あ~、そうっすね」


 鏡越しに視線が交わり、優しい笑みが向けられる。


「こういう話自体も、前は俺が1人で喋ってたのに。……廉君、変わったね~。なんか、凄くいい顔してる」

「……」


 朝陽にも言われた。

 変わったと。

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