冷淡男子の上條くんは全振り初カノにご執心

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　期末考査2日目。

　じりじりと肌が焼けるような夏の日。

　和香と登校したまどかは、いつものように鞄から荷物を取り出し、机に入れようとした、その時。

　机の中に、無いはずの数Ⅱのノートが入っていた。

　和香（長瀬）の前の席が中澤 文乃。

　その中澤の机をざっと確認するが、まだ登校してないようだ。

　昨日は『忘れた』と言っていたのに、いつ机の中に入れたのだろう？

　不思議に思いながら、ノートをパラパラと捲った、次の瞬間。

『相手のためにもならないから　もう簡単にノートを貸すな』

　空白のページに知るされた文字。

　誰が書いたのか、名前は書かれていない。

　けれど、それを誰が書いたのか、すぐに分かってしまった。

　形の整っている綺麗な文字。

　人柄を表しているようで、文字から誠実さと優しさが滲み出ている。

　それと、次の余白のページに携帯の番号とアドレスが書かれていた。

　どういう意味だろう？

　連絡しろってこと？

　それとも、ただ単に何かあった時のための連絡ツール？

「藤宮くん、上條くん、おはよ～」

「由紀ちゃん、おはよう」

　入口近くにいた山口さんが二人に声をかけた。

　けれど、反応したのは藤宮くんだけ。

　相変わらず上條くんは完全無視スタイルのようだ。

　自動販売機に飲み物を買いに行っていたようで、お茶を手にした上條くんが私の方に歩いて来た。

　正確には、私の前の彼の席だけれど。

「おはよう」

「……」

「ノート、ありがと」

「……ん」

　椅子を引いた上條くんの口角が、緩やかに持ち上がった。

　そして、自席に着いた彼から、ふわっとミントの香りが漂って来た。

「それと」

　教室内で話していいのか迷ったまどかは、机の上に置いてある自身のスマホをトントンと指で叩いた。すると……。

「何かあったら連絡しろ」

「へ？」

「あ、……何もなくても連絡してくれていいけど」

「…………え？」

　周りにいる生徒に聞こえないように上條くんはそっと呟いた。

　それって、どういうこと？？