「廉、最近何かとまどかちゃんにちょっかい出してるよな」

「は?……別にそんなんじゃねぇよ」

「けど、明らかにまどかちゃんにだけ執着してんじゃん」


 執着?

 いつ俺があいつに執着したって?


「あ、その顔だと、何で俺がって思ってるだろ」

「……」


 朝陽とは親が仲がいいお陰で小さい頃から気心知れた仲。

 俺のこの冷めた性格でも、嫌な顔一つしないで傍にいてくれるダチだ。


「自分では気づいて無いかもだけど、相当目で追ってるよ。……まどかちゃんを」

「ッ?!」


 朝陽に指摘され、ハッとした。

 言われてみれば、そうかもしれない。


 他の女子が会話してようが、騒いでいようが『うるせぇな』くらいにしか気にならないが、小森が誰かと話してたり何かしてるとついつい見ている気がする。

 何故だ?

 いつから?


 今まで誰かが嫌がらせをされていようが首を突っ込んだことのないこの俺が、気付いたらあいつを助けていた。

 それも、既に3回も。


「何でか分かんねぇけど、気になるんだよな」

「へぇ~」

「んだよ」

「別に~」


 正門を出て、駅へと向かう。

 隣りを歩く朝陽は、何やら楽しそうに含み笑いをしている。


「廉がねぇ~」

「……んだよっ」

「今どんな噂が立ってるか、知らないだろ」

「知るわけねぇだろ、興味ねぇし」

「だよな~」


 ポンと肩に手が置かれ、揶揄いの目を向けて来る。


「すっげぇ楽しみ~」

「何だよ、それ」

「意外とまどかちゃん、廉に合うかも」

「は?」

「うんうん」

「何が、『うんうん』なんだよっ」

「フフッ」

「不気味な笑いすんな、蹴っ飛ばすぞ」

「どうぞどうぞ~」


 蹴って下さいと言わんばかりに、朝陽は揶揄ってお尻を突き出した。

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