冷淡男子の上條くんは全振り初カノにご執心

５

　体育教官室で頼まれていた雑用を終え、帰宅しようと玄関へと向かっていた廉の視界に、女子2人組について行く小森の姿を捉えた。

　明らかに異質な空気を纏っている。

　誰とでも隔てなく接する小森だが、前を歩く2人と仲良く会話してるところを俺は見たことが無い。

　女子2人組はクラスでも派手目な部類に属する女子だ。

　小森はクラス委員という立場もあるかもしれないが、根っからの生真面目気質。

　そんな3人が人気（ひとけ）の無い西棟へと向かっている。

　そういえば、あの2人、少し前の制服検査で言い合いしてた真島とよくつるんでる女子だ。

　しかも、最近小森に対しての口調が少し棘があるような感じがしてたけれど。

　なるほどな。

　あれを根に持って呼び出したのか。

　しょうもねぇ奴らだな。

　こっそり小森達の後をつけて行くと、案の定そこには真島がいた。

　しかも、ホースを使って小森に大量の水を浴びせる始末。

　おいおい、いつの時代だよ。

＊＊

「あの……上條くんっ」

「お前、ホントに馬鹿なんだな」

「……え？」

「あんなの、放っておきゃぁいいだろ」

　理科室の前から小森の腕を掴んで昇降口へと向かう最中、すれ違う生徒の視線が何故か、小森に向けられている。

「ッ？！」

　振り返った先に映ったのはブラウスが濡れて張り付き、完全に下着が透けている小森だった。

　さすがにこの状態は可哀そうだよな。

　確か、この中に……。

　廉は鞄から体操服の上着を取り出し、それを小森の肩に掛けた。。

「ちょっと汗臭いかもだけど、無いよりはマシだろ」

「濡れちゃうよ？」

「洗濯すりゃ、いやでも濡れる」

「っ……」

　緊張が解けたのか。

　俺の気遣いに申し訳なく思ったのか。

　ジャージに袖を通した小森の目から、大粒の涙が零れ落ちた。

「おっ、……おぃ、俺が泣かしたみたいだから、泣き止め」

「っ……ごめんなさい、……それと、ありがと」