冷淡男子の上條くんは全振り初カノにご執心

４

　嫌な予感がする。

　まぁ、こういうことも想定内だけれど。

「どこまで行くんですか？」

「黙ってついて来なさいよ」

　やっぱりね。

　あからさまな態度が物語ってる。

　まどかは中庭の端まで連れて来られた。

　西棟の一番端に到着した。

　辺りを見回した、その時。

　シャーっという音と共に勢いよくホースの水がかけられた。

「いつもウザすぎるほど暑苦しんだよ、アンタ。少しは頭でも冷やしな」

　嘲笑するような視線を向け、真島が水を浴びせて来たのだ。

　西棟の一番端の教室は理科室。

　その理科室の中庭部分に接している場所に花壇があり、その花壇に水やりをするようのホースが少し離れた場所にある水道から伝っている。

　水道の陰に隠れていた真島は甲高い声と冷ややかな視線を向けながらホースのノズルをまどかに向ける。

　シャワーヘッドが拡散シャワー状態になっていて、見事にまどかはずぶ濡れになってしまった、次の瞬間。

「ん？……あれ？……水がっ……ッ？！」

　急にシャワーの水が止まった。

　真島の声に反応するように瞑っていた目を開くと、真島の背後に上條くんが立っていた。

　水流を止めるように彼がホースを踏んでいるようだ。

　いつもは近寄りがたいオーラを放っている彼が自ら話し掛けて来たとあって、真島は一瞬で紅潮した。

　そんな彼女にゆっくりと顔を近づけ、そっと耳元に呟く。

「気は済んだか？」

「へ？」

「この間の制服検査のを根に持ってやったんだろ？」

「……っ」

　赤らめていた真島の顔が、みるみるうちに蒼ざめてゆく。

　真島の手からホースのノズルを取り上げた上條の口角が、緩やかな弧を描いた。

　そして、ぎゅっと踏みつけていた足を持ち上げ、シャワーのノズルから勢いよく水が飛び出す。

「キャァーッ！！」

「ざまぁ～みろ」

　至近距離での放水とあって、まどかにかけられた量より遥かに多くの水が浴びせられる。

「こういう遊びがしたいんなら、いつでも俺が相手してやる」