6月上旬のとある日、体育館にて。

 夏服に切り替わったのを機に、制服検査が行われた。


真島まじまさん、そのピアス、放課後まで預からせて貰うね」

「いいじゃん、これくらい。髪下ろしてたら分からないでしょ」

「そもそも学校にして来るものじゃないでしょ。ちょっと真島さん、待って!」


 担任と共に風紀委員とクラス委員であるまどかは制服検査をしていると、校則違反の生徒が注意を無視して教室へと帰ろうとしている。


「校則だし、違反する真島さんが悪いでしょ」

「何なの?頭いいからって、馬鹿にしてんの?」

「はい?何でここで、頭の話になるの?」

「上から目線でウザいんだけど」

「……ウザかろうが、違反は違反だから」

「あぁ~、もうホント、そういう優等生ぶるとか、ウザいから」

「……そのピアスを預かります」


 明るめな茶髪に髪を染めていて、化粧も濃いめ。

 さらには派手なピアスをしていて、結構目立つ真島まじま奈津子なつこは、今時女子。


「渡せばいいんでしょ、渡せば」

「放課後に職員室に取りに来て下さい」

「それ、もう要らないから、捨てといて」

「えっ……」


 まどかの注意に観念したのかと思いきや、ピアスを放棄したようで、外したピアスをポンと投げて来た。

 真島に注意出来なかった風紀委員の溝野みぞの 凛子りんこは、申し訳なさそうにまどかを見つめる。


「なんか、ごめんね、小森さん」

「別に平気よ」

「私が言うべきだったのに、ホントごめんね」

「まだ注意する人沢山いるから、残りやっちゃおう」

「……うん」


 誰も好んで注意したいわけじゃない。

 風紀委員と言っても、くじ引きで決まったのだから溝野さんだって気が進まないのは分かる。

 クラス委員として、私がしっかりと注意すればいいだけ。

 まどかは率先して制服検査を進めた。

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