涙を隠すLサイズ

 夏服が眩しい6月上旬、朝8時半過ぎの教室。

 清々しい風が窓から入り込み、長瀬の席で談笑している小森の髪がゆらゆらと靡く。


「うちのクラス、マジで当たりだよな~。長瀬は可愛いし、小森は美人だし」

「小森は美人だけじゃないって。見ろよ、あの脚。すっげぇ、キレイじゃん。それにスタイルもいいしさ」

「そうそう、めっちゃスタイルいいよな。夏服になって、拝み放題♪」


 クラスの男子がゲスな会話をしている。

 普段は後ろの席だから小森をじっくり見ることはあまり無いが、改めて見てみると、確かにスタイルはいい部類だろう。

 小柄の長瀬と比較すると余計にそう思えるのかもしれない。


「今日の長瀬はピンクだろ」

「小森は水色っぽい」

「いや、薄い紫だろ」


 何の話だ?

 毎日毎日飽きずに何をそんなに白熱したトークが出来るのか。

 俺の近くで会話すんな。

 目障りだし、耳障りだ。


「朝陽、アイツら何の会話してんの?」

「ん?……あぁ、女子の下着の色じゃない?」

「は?」


 くだらねぇ。

 ブラウスに透けてる下着の色を話のネタにするとか、お前ら、そんな事を口にしてるからモテねぇんだよ。


「和香ちゃんはもふ可愛い系で人気だし、まどかちゃんは色気のある美人系で2人とも結構人気だよ」

「へぇ~」

「廉ならどっちが好み?」

「……興味ねぇ」

「あ~だよねぇ~。俺なら……ん~まどかちゃんかなぁ。男慣れしてなさそうで、俺好みに仕込みたくなるよね」

「勝手に言ってろ」


 お前なら、男慣れしてる女でも自分好みに仕込めるだろうが。


「うちのクラスの女の子、みんないい子だよね~~」


 朝陽は、女なら誰でもウェルカムだろ。

 ガツガツしてないところが唯一の救いというか。

 こいつの性格上、揉めることが好きじゃないしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る