冷淡男子の上條くんは全振り初カノにご執心

７

　海外からの交換留学生・バークレー兄妹を歓迎する会は生徒会主催で、体育館を使って全校生徒による〇×クイズから始まり、大盛り上がり。

　留学生の2人も凄く楽しそうに参加している。

「小森さん、そろそろ……」

「あ、はい」

　生徒会副会長の芹沢（せりざわ） 篤人（あつと）(3年)に耳打ちされ、ステージ脇からステージ裏へと向かう。

　失敗しても悔いの残らないように頑張ろう！

　自分自身に言い聞かせて、深呼吸した。

「続きまして、本校の教職員の紹介も兼ねて、動画をご用意致しました」

　芹沢のマイクアナウンスにより、体育館内の照明が落とされた。

　体育館の床に座る全校生徒の視線が、ステージ上へと向けられる。

　まどかはステージ裏にいる生徒会役員の人の合図を受け、いざ、表舞台へ。

　ステージの端に置かれたグランドピアノ。

　映像の邪魔にならないように鍵盤部分にだけ間接照明が当たっている。

　薄暗い中深々とお辞儀をし、椅子に腰かけ気持ちを落ち着かせていた、その時。

「少し、詰めろ」

「っ？！……え？」

　突然背後から現れたのは、前の席の上條くん。

　ピアノの椅子に座る私の右側に、無理やり座って詰めるようにと肩をぶつけて来た。

「何でいるの？」

「……その手じゃ弾けないだろ」

「え？」

「お前が練習してた曲、俺がフォローしてやるよ。お前、左手だけでいいから」

「……？？」

　肩が触れそうな至近距離。

　ステージ下にいる生徒に聞かれないように小声で話す上條くん。

　まどかは何が起きているのか、さっぱり理解出来ず、勢いよく振り向いた。

　ステージ裏には生徒会長がいて、何故かGoodサインのように親指を立てている。

「何の曲弾くか、知ってるの？」

「あぁ、じゃなきゃ、ここにいねぇだろ」

「っ……」

「アレンジもしてやるから、お前は左手だけ弾けばいい」

　上條君は何事もなかったように指のストレッチを軽くし、鍵盤にふわりと指を乗せた。