第20話:芸能事務所の人たち。
俺と姫が学校へ出かけてる時は、仏像仮面ブッダーが姫を星に連れて帰るって話。
姫がブッダーと星に行くことは拒否してくれたからとりあえず安心していいかな。
さて、それはいいんだけど・・・コスプレイベントの次の日早くも姫のコスプレがネットに拡散されていた。
インスタ、ツイッター、ブログに・・・アナ・デ・トライザクトの画像や動画が
出回っていた。
怖い時代だよな。
一夜にして全世界に情報が流れていくんだから・・・。
それは夢を描いてるものにとって、ネットを利用することは絶好のチャンス
なのかもしれないが、でも、俺としてはそれ以上騒がれたくなかった。
姫を・・・俺たちをそっとしてて欲しかった。
姫が登校中や下校中、誰にもバレなかったのはコスプレしてなくて制服を
着ていたから一般人には気づかれにくかったんだろう。
たぶん誰かが俺たちの住所とか漏らさない限り人が訪ねて来ることはないと
思っていた・・・。
でもそれは甘かった。
日曜の朝、さっそくどこかに芸能事務所が俺んちの住所を調べて訪ねてきた。
大げさな展開になりそうだった。
「あの・・・こちらのお宅は迦具夜 姫さんのご自宅でしょうか?」
「そうですけど・・・」
「私「ピュアドリーマー」って芸能事務所のものなんですが・・・
迦具夜 姫さんのご家族の方か保護者の方いらっしゃいますかね」
「俺がそうですけど・・・どのようなご用件でしょう」
「お宅のお嬢さんを、うちの事務所にどうでしょうって話なんですが」
「そう言うのは本人に聞いてみないと分かりませんけど・・・」
「お嬢さん・・・姫さんは御在宅では?」
「いますけど・・・」
(マズいな・・・今、姫を呼んだら絶対、パンいちで二階から降りてくるな)
「あ・・・あのすいません・・・忘れてました」
「今、姫は出かけてまして・・・」
「お手数ですけど、また出直して来ていただけませんか?」
「そうですか・・・残念ですね」
「では、またお伺いしますので今の話、姫さんにお伝えください」
そう言ってピュア・ドリーマーの人は名刺を置いて帰って行った。
こんな大げさになったらマズいよな。
姫が世間の目に晒されるんだぞ・・・。
そうなったら、もう個人の問題なんて言ってられない。
どうしたらいいんだろう。
遅く起きてきた姫はやっぱりパンツ一丁だった。
事務所の人が見たら卒倒するぞ・・・帰ってもらってよかった。
あと個人でも俺んちに何人か訪ねて来たやつがいたが俺は全部居留守を
使って無視してやった。
「おはよう、ツッキー」
「おはよう、姫」
「あのさ、土曜日のコスプレイベント・・・あれがネットに拡散されてんぞ」
「それで芸能事務所の人が俺んちに、おまえを訪ねてきた」
「げいのうじむしょ?・・・」
「つまりタレントになりませんかって勧誘に来たんだよ」
姫は尻をボリボリかきながら眉をひそめて嫌そうな顔をした。
「私、そう言うの興味ないから・・・ツッキー断って・・・」
「それはいいけど・・・もしかしたら芸能人の道が開かれるかもしれない
んだぞ・・・」
「だから〜興味ないってば」
「そうか・・・もったいない気もするけどな」
「でも、俺としては断ってくれたほうがいいんだ・・・」
「おまえが、タレントになったら絶対イケるって俺は自信持って言えるけど
でもそうなったら、もう俺だけの姫じゃなくなるだろ・・・」
「そんなのは俺は望まなし・・・」
「おまえがテレビのCMになんか出てるの・・・俺は切なくて見れないよ」
「大丈夫だよ・・・私はどこにも行かないから・・・」
「ねえ、それより朝ごはんは?」
「色気より食い気か・・・」
今度、また芸能事務所の人が来たら全部断ろう。
それを境に他の芸能事務所の人たちが俺んちを訪ねて来るようになった。
「タレント活動に本人はぜんぜん興味ないですから」
って断ったが、やつらは諦めずに再三俺んちを訪ねてきた。
つづく。
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