第19話:白雪の性根。

「姫ちゃん、もう一回付き合ってって告ってもいいかな?・・・」


「ヨコチ・・・また姫にビンタ食らうぞ」


「いい、入院してもいいわ・・・姫ちゃんにビンタ食らうなら俺は本望」


「完全に姫にいかれてるな・・・」


「何度、告っても無駄だからね・・・私にはツッキーしかいないんだから」


「あ〜その言葉は、死刑宣告されてるようだ・・・」


ヨコチは頭を抱えて嘆いていた。


(姫は俺の彼女・・・ヘタレのおまえになんか渡すかよ)


そんな珍劇をやってたら姫のコスプレを見つけたオタクやカメコが次々

寄ってきた。

そりゃそうだろう・・・姫は際立っていたからな。

大変な騒ぎになった。


姫の周りは人だかりになって、どんどん囲まれていった。

俺は蚊帳の外・・・ただ見てるしかなかった。

ここは姫には触れないほうが無難・・・俺が姫と関わりがある男だと思われたら、

なんかマズい気がした。


その間に俺は白雪の生セルジュを見ておこうと思ったら白雪のほうから

俺のところにやって来た。


うん、白雪のセルジュも、思った以上だ。

揺れ動く男心・・・白雪のセルジュ・フォン・ヴァルデックもいいな〜・・・

鼻の下が伸びる。


「迦具夜さん・・・あのコスプレ、妹さん?」


「あ、そうだけど・・・」


「ふ〜ん・・・すごい人気ね」


「いや〜俺は白雪さんを見に来たかったんだけど妹が私も行くっていうから」

「連れてきたら、こんなことになっちゃって・・・」


「あの子・・・私のファン、全部持っていくんじゃないの・・・そんな

勢いだけど・・・」


「にわかコスなんだ・・・今回だけのね」


「ふん」


完全に白雪の嫉妬から出た「ふん」だった。

素人がって言ってるような冷たい目だった。


それで俺の気持ちは一気に冷めた。


姫が前に「そりゃね、見た目って大事だと思うけど、問題は中身でしょ?」

って俺に言った言葉。


今はそれが、よく分かる気がする。

たしかに姫はわがままだったり手を焼くこともあるけど性根は腐ってないし

純粋で自分に正直なだけそれだけはいつでもブレないでいる。

満月の夜以外はな。


白雪は見た目はいいけど中身が問題な女なんだ・・・。

早めに白雪の性根が見えてよかったと思った・・・いつまでもよその女に

うつつを抜かしてたら姫に悪いもんな。


姫を連れてイベントに行くってのに最初はちょっと抵抗があったけど、

今回のイベントに来て白雪のことが少しでも知れて正解だったかもしれない。


でも、でも姫一人、こんな大勢の大衆の中にさらしておくなんて俺はとっても

危険を感じた。


みんなの姫を見る目が異常なんだもん。

絶対危ないと思った。

姫を見ると手なんか降ってカメコにポーズなんかとっていた。


「まじでか・・・その気になってるよ」

「ゴスロリやめてコスプレにハマるんじゃないのか?」


そしたら俺の肩を叩く奴がいた。

ヨコチだと思って振り向いたら・・・・仏像仮面ブッダーだった。


「来てたのかよ・・・」

「ああ・・・そのまま仏像仮面ブッダーでコスプレ大会に参加できるな」


「大盛況でござるな・・・南無阿弥陀仏・・・」


「それ言われると、引導を渡された気分だわ」


つづく。


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