第18話:姫のアナ・デ・トライザクト。

ってことで仏像仮面ブッダーが姫の要望に応えるべく我が家にやってきた。

転送って便利・・・呼んだらすぐ来れるんだから。


「姫、コスプレーヤーになるつもりござるか?」


「今回だけね、基本はゴスロリだから」


「さっそくでござるが・・・姫にぴったりの衣装を持参したでござる」

ってことことで姫は仏像仮面が持ってきたコスプレ一式、ウィグや衣装を

身につけた。


なんと・・・なんとそれは、「ブルーヘブン・ファンタジー」と同じ

ネットゲーム「クレセントムーン・シンフォニー」のキャラ

《アナ・デ・トライザクト》だった・・・」


アナに変身した姫は惚れ直すくらい俺のハートを穴だらけにした。

コスプレって、あなどってはいけない、それだけで好きになってしまうから・・・。


これなら今の姫なら白雪に勝てる気がした。

もともと姫は身長もあるし9頭身だから、こういうコスプレをすると

めちゃ際立つ。

まるでゲームの中から出てきたみたいだった。


俺は姫を連れてコスプレイベントの会場に出かけた。

姫がアナにコスプレしたまま出かけたので電車の中でも、どこでも姫は

注目の的だった。

勝手に写メ撮る奴がいたりコスプレになんか興味なさそうなサラリーマン

のおっちゃんとかもジロジロ姫を見てるし・・・。


注目されてるのは俺じゃないのは分かってるけど、そんなに人に見られた

ことがないから、どうも居心地が悪いった。

俺は知らん顔して姫の手を離さいないように握っていた。

また腕が外れたりしないか心配しながら・・・。


電車を降りてタクシーを捕まえて会場に着くと、すでに大勢のオタクと

カメコが来ていた。

コスプレしてる男子や女子もいてコスプレ好きにはよだれものだった

だろう。


「たくさん人来てるね」


「この人たちみんなコスプレオタクだぜ・・・すごい熱量だよな」


俺はほんとは白雪のセルジュに扮したコスプレが見たかったんだけど、

でも姫のアナ・デ・トライザクトを見たら、そんなことどうでもいいやって

気持ちになっていた。


たしかに白雪のセルジュは群を抜いている。

でも、でも姫のアナを見たら他のコスプレーヤーのことは一気に興味が

失せた。

で俺は、先に会場に来てるだろうヨコチを探した。

待ち合わせの場所まで行くとヨコチは白雪のセルジュのところで写真を

撮っていた。

さすがに白雪は人気があるようで、たくさんオタクとカメコが集まっていた。


俺は白雪に夢中になってるヨコチに声をかけた。

ヨコチは俺の方を見て、「おっ」って言ったあと二度見して固まった。


アナ・デ・トライザクトにコスプレした姫を見たからだ。

ヨコチの時間がそこで止まっていた。


「ヨコチ・・・おい、ヨコチ・・・」


俺の声は聞こえてなかったみたいだ。

もちろんヨコチは姫に魅入られていたのだ。


「ヨコチ・・・・ヨ・コ・チ〜」


ようやく我に返ったヨコチ・・・姫をぐるっと回ってアナを穴があくほど

見た・・・まるで品定めするように・・・。


「ヨコチ・・・近いってば・・・ナグるよ・・・」


うっとうしそうに姫がそう言った。


「姫ちゃん?・・・まじで?」

「いや〜参ったな・・・いや〜、言葉がでないわ・・・いや〜まじでか・・・

アナ・デ・トライザクトってか?」


「姫ちゃん、もう一回付き合ってって告ってもいいかな?・・・」


「ヨコチ・・・また姫にビンタ食らうぞ」


「いい、入院してもいいわ・・・姫ちゃんにビンタ食らうなら俺は本望」


「完全に姫にいかれてるな・・・」


つづく。


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