第2話 黄金のタレに出会いました
「………はぁ。どうしよう。本当に追い出されちゃったよ……………お腹空いたな………」
みんな酷い……。これが12年も一緒に過ごした家族のすることなの?!大体さ、12歳でニート認定して追い出すとかあり得ないんだけど?!せめて20歳過ぎてからでしょ!
それに本当に何も持たせて貰えなかった!分かってる?身一つで追い出すとか人非人のすることだよ?!こう言う時はさ、少しくらい当面の生活費を渡す所じゃないのかな?!そんな常識も無いなんて、僕は正直がっかりしたよ!
巻き込まれ召喚者の方がまだ何かしら持たせて貰ってるよ!金貨とか金貨とかをさ!
「………ぐすっ………お腹空いた………何か食べよう。きっとお腹いっぱいになったら良いアイデアか浮かぶかもしれない」
そう言えば、昔聞いたことがあったな……悲しくっても腹は減るって。屋敷から離れ、街の方へトボトボと向って歩く。そこでハッとして立ち止まった。
僕の高貴な姿を見たら、人攫いが来てしまうかもしれない……それは大変だ!よし……先ずは街人に偽装しよう。
「クリエイト!……出来た!」
僕は魔法で作ったばかりのネックレスを首にかけた。
【偽装のネックレス(街人)】
うん、これで良いな!何処から見てもただの街人だ。溢れ出すオーラは抑えられないかもしれないけど致し方ない。それに今着ている服はお気に入りだから、着替えたく無かったんだよ〜。
…………あああ!!そう言えば、僕着替えも持たせてもらえなかった!!信じられない!!
あ……ポーチに一着だけ入ってた。クソぅ!こんなことなら、お気に入りの服をもっと入れておけば良かった!そうだ!靴も替えが無い!嫌だよ!僕は優れた嗅覚を持っているんだ!足臭とか耐えられない!!
悔しさのあまり、地団駄を踏んでその場で暫くフンガフンガと息巻く。いつものクールな僕に戻る為の通過儀礼だ。
そうしてやっと街へと歩き出す。頼れるのは己の嗅覚だ!さあ、僕を美食へと導いてくれ!
歩き進むと、人の喧騒が徐々に大きくなり、街の中心部らしき場所へと到着した。露店から立派な店構えの商店まで沢山のお店が軒を連ね、お陰で右へ左へと僕の視線がフラフラと定まらないよ。
そうして目線は非ぬ方向を見ているのに、本能が導くまま、僕の足はススッとある屋台へと向っていた。
「おう、いらっしゃい。食ってくか?」
「はい!この絶対に美味しいであろう串焼きは、1本おいくらでしょうか?」
「お…お前……良く分かってるじゃないか!俺の串焼きは街一番よ!値段は一串150ゼルだぞ!」
「では、先ずは一串頂きます」
僕は、ベルトに着けていたポーチかからお金を出して、串焼きを購入した。
この香り、この照り……これで美味しくなかったら、僕はこの場で華麗に月面宙返りをしてみせる!!
「………ああ!!やっぱり美味しいぃぃ!!」
「あたぼうよ!親父の頃から引き継いだ秘伝のタレを使った味自慢の串焼きだからな!」
ああ……駄目だ1本では足りない。噛み締める毎に広がる肉汁とタレのハーモニー。程良く脂がのり、適度な歯応えのある肉質は、熟練の技術で一串一串丁寧に打たれているのだろう。
確か、串打ち5年?10年??……とにかく結構修行が必要と聞いた。
しかもこのタレ!本当に美味しい!僕的には異世界版、黄金のタレ認定だよ!
僕は、その場で心ゆくまで絶品の串焼きを堪能した。だいぶ人が多くなってきたので、屋台の大将にお礼を言って、後ろ髪を引かれつつその場を後にした。
さて、小腹は満たされたぞ。あの素晴らしいおやつ(串焼き21本)が、僕の心を落ち着かせてくれた。
もう家族の元に戻れないなら、住処も確保せねば。フムフム……あとは身分証明かな?
なんせ、家名を名乗っちゃ駄目だと言われた僕は『ルーディウス・セラルド』では無く、ただの『ルーディウス』になってしまったからね。
学校で仲良くしていた皆とも、もう気安く出来ないって事になるのかなぁ……。それは寂しいな……。僕の勘違いじゃなければ、本当に仲の良い友達だったから。……どうしよう勘違いだったら。
ダメ!良くないよ!マイナス思考は!ここは甘い物で幸せ成分を摂取しよう!早速ポーチから、以前購入しておいたクッキーを出してサクサクと食べる。美味しい〜。
………………………ふぅ…少し落ち着いた。
身分証明かぁ……。12歳じゃ冒険者ギルドぐらいしか登録出来ないんだよね。まあ各国共通だし、無料だし、とりあえずは冒険者ギルドで登録だけはしておこうかな。
別に登録したからと言って冒険を強制される訳でも無いし、僕は『Sランク冒険者』にも『冒険王』にもなる気はないからさ。まあ、そこは、ぼちぼちって感じだよ。
そうと決まれば、いざ冒険者ギルドへ!
待っててね!可愛い受け付け嬢さん!!
今から僕が行くよ!!
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