第2話 【突然の】何だ、これは!?【出来事】
「な、謎のモンスターがああああ!!」
「なんだコイツら!?」
「助けてー!!」
<グランファンタジア・オンライン>の世界に、謎のモンスターたちが突然現れ、世界を蹂躙し始めたんだ。
僕はその時、偶然ログインしていて、グランファンタジア時間の昼間に、アヤネちゃんと一緒に、皆で稼いだ金で狩った、いや買った家の、個室のベッドでのんびりしてたんだけど……。
僕のそばでシーツをかけて眠っていた裸のアヤネちゃんが、なにかに気がついた様子で、うん、と起きると、ウィンドウを見て僕に呼びかけた。
「ん……。ハヤトさん、あれ、ログが……?」
寝ぼけ眼で僕もログを見てみた。
確かに、ログが速くなってる。シャウト。ダメージログなど。まるで街中で戦闘が起きたみたいだ。
「なんか急に流れが速くなったね……」
「外が騒がしいけど、どうしたのかな……」
「ちょっと出てみようか」
「うん」
僕達は服などを着て、部屋を出た。
他の皆も騒ぎに気がついたようで部屋から出てきた。
こんなときにモンスター襲来のイベント? でも、街はガードが守ってくれていいるはず。
階段を降り、玄関の扉を強く開けた。
すると。
変な生き物が、街や野外にうようよしていた。
全身黒を基調とした、全長五~十メートルぐらいの、昆虫(甲虫や芋虫など)にも、魚介類(特にタコや貝類だ)にも似た多脚の生物だ。
その不気味な生物は足(?)で建物を潰したり、タコの口にもにたそこから石のようなものを飛ばして周囲の物を破壊していた。
「なんだ、これ……!?」
口にしながら僕がGMを呼び出そうとしたとき、眼の前にウィンドウが突然開いて、その中に慌てた顔のカランちゃんの姿が。
<大変ですっ! <グランファンタジア・オンライン>が攻撃を受けて、ウィルスが侵入しましたっ!>
「えっ、ウイルスですか!?」
そばにいたアヤネちゃんが震える声で驚いた。
「なんとかならないの!?」
<こちらでもなんとかしていますが……。基本的に冒険者の攻撃は通用するようですので、ハヤトさんも参加してくださいっ! 緊急クエストですっ!!>
むっ、クエストということは……。
「報酬出るの!?」
<出ますっ! 普段の二倍、いや三倍出しますっ!!>
カランちゃんの悲痛にも似た声を聞いて、僕は居ても立っても居られない気持ちになった。
それとは別に。
報酬だっ!! やはり労働の対価には金というものだっ!!
という気持ちも湧き上がる。
よしっ。
「アヤネちゃん、皆、行こうっ!」
「はいっ!」
「おうっ!」
僕は装備マクロで素早く武器防具を装備すると、家を出て街へと駆け出していった。
*
外に出てみると、街やフィールドには他の冒険者たちが既に出撃しており、謎の生物と戦いを繰り広げていた。
「何だこいつ、硬いぞっ!」
「ヒットポイントが高い……」
「魔法効いてるこれ!?」
冒険者たちは口々に悲鳴や呪詛に似た言葉を吐きながら戦っていた。
……こいつは手強そうだな。
じゃあ。
いっちょ頑張るかなっ! 報酬のためにっ!
僕は双剣を鞘から抜くと、加速能力で一番近くにいた怪物へと走り込んだ。
ん、あの怪物……。胴体にコアに似た光り輝くところがあるな……。
あれが弱点か? よしっ。
僕は怪物の攻撃や足を軽快なステップで躱し、双剣の片方を怪物のコアらしきところに突き刺す。
「チェストーッ!!」
あっ、また言ってしまった。恥ずい。
それはともかく。
コアを刺すと何かを断つ鈍い音がして、甲虫の体はガクガクと震えると、急に動きを止め、その場に崩れ落ちた。
これは。やっぱり。
僕は周辺の冒険者に向けて叫んだ。
「こいつは体にある光り輝くところが弱点です! そこを集中攻撃してください!」
僕の叫びに、周囲の冒険者たちは一応に頷きを見せた。
「わかった!」
「やってみる!」
「弱点がわかれば、こんなもーん!」
冒険者たちは連携を取りながら、怪物のコアへ向けて集中攻撃を始めた。
よしっ。
次は!? あれだ!
僕は次のクリーチャーに狙いを定めると、双剣の刃を煌めかせて駆け出した。
*
どれだけ時間が経ったのだろう。
僕らは未知の怪物たちと激しい戦いを繰り広げた。
結果。
怪物たちは駆逐された。
なんとか、勝てたかな……。
ホコリが落ち着き、静けさを取り戻した<グランファンタジア・オンライン>の街並みの中で、僕は背伸びをした。
「終わった、のか……?」
「みたいですね……」
大きな魔法の杖によりかかり、疲れた顔のアヤネちゃんとそう言い交わしていると、僕の前にウィンドウが現れ、金髪に赤目の美少女が、
「緊急クエスト終了しました……。皆様お疲れ様でした……。しばらくそのままでお待ち下さい……」
と顔に疲れを見せながら僕らをねぎらった。
カランちゃんもだいぶ疲れているな……。
運営の方であれこれしていたんだろうな。
まあ、クエストも解決したし、これでいいだろ。
さて、出ようか。
ログアウト、っと……。
その時、カランちゃんが悲鳴にも似た声を上げた。
「あーっ! ハヤトさんっ! ログアウトしないでーっ!」
えっ、なんで!?
そう思うまもなく。
ログアウト処理は終了し、VRデバイスのホーム画面に戻った。
なんでカランちゃんあんなこと言ったんだろ……?
頭を振りながらVRデバイスを取った。
物は色々あるけど寂しい、薄暗い自分の部屋がそこにはあった。
……ここじゃない。僕の居場所は。
そう思って俯いたとき、一つ大きな揺れが来た。
……地震?
顔を上げ、周りを見たその時だった。
窓の外に、あの昆虫にもタコにも似た黒い怪物がいた。
なっ、なんでリアルにあの怪物がいるの!?
なんて急展開すぎるの!?
その怪物は僕に気がついたのかこちらをゆっくりと向き、タコにも似た口から何かを吐き出そうとした。
「や……!」
ぼくが伏せようとした瞬間、外で轟音が一つ響いた。一条の光が怪物を貫く。
その後、虫のようなタコのような怪物は崩れ落ち、動かなくなった。
死んだ……?
なんで?
と思うまもなく、地響きとなにかが回るような音がして、怪物の近くを物体が通り過ぎた。
それは、戦車だった。TVでよく見る自衛隊の戦車ではなく、もっと未来的なフォルムの戦車だった。
しかしその姿は安心できるように思えた。
あれは……。
僕が首を捻ったその時、部屋の中に突然虹色の燐光が生まれた。
その燐光は一人の少女の形を形作って。
「カランちゃん!?」
なんで、こんなところに。
またまた急展開だよ!?
僕の思考を読み取ったように、彼女はちょっと早口でこう告げた。
「もしもしご無事でしたかっ。運営のカランですっ。あなたに伝えたいことがありますっ」
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