40 暴走する魔力


俺の手に宿る黒炎は、これまで感じたことがないほどの激しさを持っていた。

神威の魔力が完全に俺の体内に流れ込んだ瞬間、それはまるで火山が噴火するように爆発的に広がり、全身が灼熱で包まれた。

黒炎の霊刃を握る手に伝わるその力は、恐ろしいほど強大で、制御することが難しいほどだった。


「修羅、その魔力を抑えきれなくなる前に、早く戦いを終わらせろ。」神威の冷徹な声が耳に届くが、すでに俺の意識は魔力の暴走に引き寄せられていた。

炎と闇が交じり合い、周囲を焼き尽くすような衝動が俺の体を駆け巡っている。


「こいつは……今までにないほどの力だ。」俺は霊刃を振りかざしながら、自分の内側で暴走し始める魔力を感じ取る。

その力が足元の地面を揺らし、周囲の空気を歪ませているのが分かる。


リヴォールが目の前に立ちはだかり、冷徹な眼差しを俺に向ける。

その目に、俺の力がいかに狂暴であるかが見透かされているような気がして、俺は一瞬、息を呑んだ。


だが、もう後戻りはできない。

この戦いを終わらせなければ、俺の中の魔力が完全に制御を失い、暴走してしまう。

俺は黒炎の霊刃を握り直し、リヴォールに向かって突撃した。


「来い、リヴォール!」俺の声は震えていたが、それは恐れではない。確かな決意が込められていた。


俺の動きが速く、激しくなり、黒炎の霊刃が空気を裂くように切り込んでいく。

だが、その魔力の暴走により、時折制御が効かなくなる。霊刃が周囲の地面に届く前に、無意識に周りのものを焼き尽くし、焦げた大地が俺の足元で歪んでいく。


「どうしろって言うんだ…!」俺は叫ぶ。

暴走する力がそのまま俺を引き裂こうとしているのがわかる。


「修羅、その魔力をどう使うかだ。お前の力は制御を越えた時、完全に狂い出す。」神威の言葉が響く。

その言葉に、俺は冷静さを取り戻すことを試みる。


それでも、俺はその魔力に振り回されていた。

リヴォールの攻撃が再び激しさを増し、黒炎をまとった攻撃がその軌道を逸らしながら、俺を追い詰めていく。

その力に耐えながら、何とか攻撃をかわし、隙を見つけて反撃する。


「暴走させるわけにはいかない。だが、この力をどう使うべきだ?」俺は自問自答を繰り返す。その間にも、リヴォールの攻撃が迫る。


だが、ふと気づいた。

この魔力を完全にコントロールできないわけではない。

戦いの中で、俺は次第にその暴走を抑える方法を見つけ始めた。


黒炎の霊刃をもう一度握り直し、体内の魔力を意識的に流しながら、その波動を整える。

魔力が暴走する瞬間を感じ取り、急速にそれを引き戻す。

最初は上手くいかなかったが、少しずつ力をコントロールできるようになってきた。


「やっとだ。」俺は呟きながら、霊刃を再び振る。

今度はその攻撃が安定し、リヴォールに対して確実にダメージを与えられるようになった。


「これだ…!」俺は意識を集中させ、その魔力を全身に行き渡らせる。

攻撃の威力が増し、黒炎がただの炎ではないことを証明するように周囲の空間を焦がしながら、リヴォールを狙い続ける。


リヴォールはその変化に気づき、急激に反撃を繰り出してくる。

しかし、俺はそれを避けるだけでなく、反撃の隙を見逃さずに攻撃を繰り返していく。


「これで決める!」俺は叫び、全ての魔力を込めて霊刃を振り下ろした。

黒炎が燃え上がり、空間が震え、リヴォールの防御を突破する。


その一撃がリヴォールに深く突き刺さり、彼の反撃が止まる。

その瞬間、俺はようやく自分の力をコントロールできたことに満足感を覚えた。


だが、リヴォールが完全に倒れたわけではない。

彼の体が崩れ始める中、俺は次の一手を考える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る