16 新たな脅威
森の深部、夜の静寂を切り裂くように不気味な気配が漂っていた。
俺は湿った土の匂いと木々のざわめきを感じながら、足元の異常な痕跡に目を留めた。
地面に刻まれた深い爪痕――だが、ただの傷ではない。
その縁には黒く焦げたような溶解痕が広がり、見ているだけで全身が警戒態勢に入るのを感じる。
「修羅、これは普通の魔物ではない。何かが異常を起こしている」
神威の冷静な声が霊刃を通じて響く。
「間違いないな。これほどの痕跡を残せる魔物はそういないが…それが何かを狩る前に知る必要があるか?」
視線を上げると、月明かりの下で木々の影が揺れている。
まるで何かが潜んでこちらを見ているかのようだが、具体的な気配は掴めない。
それでも俺の心臓は脈打ち、狩猟の興奮が静かに湧き上がってきていた。
「お主にとって未知のものだ。狩るならば、慎重に動け」
「慎重か…俺に向いてると思うか?」
冗談めかした言葉を返しつつも、俺は霊刃を握り直した。
地面を踏みしめる微かな音が遠くから聞こえてきた。
複数の足音――人間だ。
俺は即座に魔法陣を展開し、透明化の術を発動する。
「ギルドの調査隊だな。
余計な邪魔が入る前に片付けるか」
「修羅、彼らが残す痕跡は役に立つこともある。
下手に殺せば厄介事を招く」
神威の声は冷静だったが、その裏には警告の色が滲んでいた。
足音が近づく中、俺は高い枝へと跳び移り、彼らの動きを観察する。
「ここにも爪痕がある。
だが、この焦げたような痕跡……何かが違うぞ」
調査隊のリーダーらしき男が険しい表情で地面を指さした。
「最近の魔物とは明らかに異質だな。
危険かもしれないが、奥へ進むしかない」
隊員たちの声が不安げに響く中、俺はその様子を冷ややかに見下ろしていた。
「進むなら勝手に進め。だが、狩りを邪魔するな」
調査隊が森の奥へと消えると、再び静寂が戻った。
俺は透明化を解き、先ほど調査隊が指した場所へ向かう。
そこには黒い液体のようなものが散らばり、異様な光を放っていた。
「これが奴の体液なのか……ただの血とは違う」
近づくたびに肌がざらつくような感覚に襲われ、全身の毛が逆立つ。
「修羅、触れるな。この痕跡は魔物の異常な変化を示している。もしかすると、複数の種が融合した結果かもしれん」
「融合?魔物同士がそんなことをするのか?」
問いかける俺に神威は答えなかったが、その沈黙が全てを物語っていた。
俺は注意深くその痕跡を辿り、さらに奥へと進む。
周囲の気配は次第に重くなり、闇が深まるごとに体中が警戒を強めていくのを感じる。
森を抜け、開けた場所に足を踏み入れた瞬間、空気が凍りついた。
濃密な魔力が周囲を支配し、呼吸するだけで肺が重くなる。
その時、視界の端に一瞬だけ影が揺れた。
何かが俺を見ている――それだけは確かだった。
「修羅、これはただの獲物ではない。慎重に動け」
俺は静かに霊刃を引き抜き、周囲の気配に意識を集中させる。
目の前の影が形を成すまで、もう少し――次の狩りが始まる準備は整っている。
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