15 狩猟者の選択
黒霧の洞窟から静かに立ち去り、再び森の奥深くへと足を進めていた。
夜が訪れ、星明かりだけが薄く森を照らしている。
だが、その静けさの中にも、心は次なる獲物への期待で高鳴っていた。
神威の声が霊刃を通じて響く。
「修羅、お主の狩猟技術は確かに磨き上げられている。だが、このままでは人間たちが狩りの邪魔をするようになるかもしれん」
修羅は冷静に答えた。
「ギルドの連中が追ってこようと狩りに支障が出ない限りどうでもいい」
しかし、神威はさらに続けた。
「お主の存在が透明な神の使いとして広まりすぎれば、狩猟の自由を失う恐れがある。これ以上目立つのは避けた方が良かろう」
修羅は一瞬思案したが、結論を急ぐ様子はない。
「今はまだ狩れる。十分だ。それでいい」
一方、ギルドでは調査隊の報告がさらに大きな話題となっていた。
ギルドマスターが集まった冒険者たちを前に言葉を紡ぐ。
「透明な存在――神の使いと噂される何者かが、次々と魔物を討伐している。
この力が人間の手にあるものだとしたら、計り知れない脅威となる可能性がある」
冒険者の中には、不安げに顔を見合わせる者もいれば、逆にその存在に興味を抱く者もいた。
「もし本当に神の使いならば、我々にとって味方となるのでは?」
「だが、正体が分からない以上、信用はできない」
ギルド内での意見が分かれる中、調査隊は新たな策を練ることになった。
「透明な存在を捕らえるため、さらに広範囲に罠を仕掛ける。次の狩猟場が分かり次第、全力でその場を封鎖するぞ」
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雷鳴が轟き、大気が震える渓谷。
その中心に現れたのはAランク魔物「サンダークロー」
雷光を纏った巨体が、夜空に圧倒的な存在感を放つ。
「修羅、注意せよ。雷属性の攻撃は奴の力を増幅させるだけだ。」
神威の冷静な声が霊刃を通して響く。
俺は霊刃を握りしめながら応じた。
「分かってる雷を超える黒炎で応える。」
サンダークローの羽毛は青白く光り、翼を広げた瞬間、大気が嵐のように荒れ狂う。
雷鳴が再び響き渡り、胸元から放たれた雷撃が一直線に俺を狙う。
だが、透明化の術を発動し、軌道を外した。
雷撃が大地を抉り、閃光が夜空を照らす。
その光の中で、俺は間合いを詰めながら霊刃を構えた。
「その雷、俺に届くと思うなよ。」
俺は空中で急旋回し、サンダークローの背後へと一気に滑り込む。
黒炎を纏わせた霊刃を振り抜き、その刃が左翼を正確に捉えた。
刃が羽毛を焼き払い、肉を裂き、骨を砕く感触が手に伝わる。
黒炎が傷口に広がり、焼ける音が雷鳴に混ざって響き渡る。
奴の咆哮が森全体を揺るがし、空中でバランスを崩した。
だが、サンダークローはまだ死なない。
左翼をかばうように旋回し、胸元に雷のエネルギーを集中させる。
その力が周囲の空間を歪ませるほど強大だった。
「修羅、奴に雷を返してはならぬ。雷を呼ぶ者には、雷を断つ刃で応えよ。」
神威の声がさらに鋭く響く。
俺は
再び高度を上げ
黒炎をさらに強く燃え上がらせた
胸元を狙い
急降下しながら
全力で霊刃を振り下ろす
刃が奴の胸部を貫いた瞬間
黒炎が爆発的に広がる
炎が雷光を飲み込み、青白い光を完全にかき消した。
轟音が渓谷に響き渡り
静寂が訪れる中
俺は冷たい魔石を拾い上げた
背後に調査隊の気配を感じつつ、俺は夜の渓谷を後にした。
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