6 修羅の覚醒
湿地を抜けて、夜の森が静けさを取り戻していた。
だが、その静けさの中で修羅の胸の奥には狩猟の高揚感がまだ残っている。
魔石を袋にしまいながら、修羅はこれまでの自分の歩みをふと振り返る。
「随分と遠くまで来たな……」
その呟きに神威が応える。
「修羅、お主はこの世界で多くの魔物を狩ってきたが、その過程で得たのは単なる力ではないだろう」
修羅は静かに頷いた。
力と技術を得るためには、数え切れない戦いと、その度に積み重ねた経験があった。
そこには修羅がまだ「弱さ」と向き合っていた頃の記憶が刻まれている。
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異世界に転移したばかりの修羅は、右手に握る霊刃と神威の存在だけを頼りにしていた。
魔物の気配は日常の一部として溢れ、辺りを徘徊していた。
「修羅の力はまだ未熟だ。だが、努力次第でどこまでも強くなれる」
その神威の言葉に従い、修羅は日々鍛錬を繰り返した。
霊刃を扱う技術を磨き、魔力の流れを理解し、特殊な術や様々な魔法を習得するまでに至った。
Aランク魔物「シャドウバイパー」は、修羅にとって最初の壁だった。
その蛇のような魔物は高速で動き、闇に紛れて獲物を仕留める狡猾な存在。
修羅は何度もその動きに翻弄され、命を落としかけた。
「動きが読まれている。冷静に奴の動きの癖を見極めよ」
神威の助言を胸に、修羅は夜通し魔物の動きを観察した。
やがて弱点を見つけた修羅は、霊刃をその一撃に全て注ぎ込んで勝利を掴む。
その瞬間
討伐の喜びと
自分が成長する爽快感
万能感が美しく
全身を駆け巡る
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「シャドウバイパーの時は、全力で戦ってやっとだった。今では、SSランクでも相手にできるんだからな」
修羅の呟きに神威が微かに笑みを含んで返す。
「お主がここまで来たのは努力の賜物だ。だが命を粗末にはするでない。」
修羅は霊刃を握り直し、遠くに見える次の狩猟場に向かって歩き出す。
その背中には、かつての「弱さ」を超えた戦闘狂の自信が滲んでいた。
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