25 極東の王 2
私の居るのは、極東の中心地、東都。
東都は東東都と、西東都に大きく別れるらしい。
西東都は山があって、自然溢れる場所で、妖魔が多くあまり人が居ないらしい(山の妖魔の方が手強いらしい)。
一方、東東都は23の区に別れている。
23区の中心地に、極東の王城、【九頭竜城】がある。
九頭竜家。
代々、極東の王として君臨する一族。
一条家や、その他の極東五華族は、元をたどると皆この九頭竜の家の子らしい。
現在の当主は【
御年は五〇。
彼は元々第八王子だったのだが、その優しい性格、そして何より彼の持つ特別な異能のおかげで、極東王の座にまで上り詰めたのだという。
王にはお子が二人しかいないそうだ。
一人は成人してるが、もう一人はまだ幼い。
しかしどちらも強力な九頭竜の異能を引き継いでおり、将来有望とのこと。
以上、サトル様が私に教えてくださったことだ。
「ついたぞ。ここが極東城だ」
私たちがいるのは、東東都23区の中心部。
東都駅(電車というモノが走ってるらしい)の近くにある、九頭竜城。
「広いですね。それに……これは川ですか?」
「堀といってな、外部からの侵入を防ぐための工夫だ」
車を城の人にあずけて、私たちと
遠くに見える立派な城、あそこに王様が住んでいるそうだ。
……でも、入り口からかなり歩く。
「…………?」
「どうした、レイ?」
「あ、いえ……誰かに見られていたような……」
気のせいだと思って、特に気にすることなく、進んでいく。
王城はいくつもの門で区切られていた。
何個もくぐりぬけて、ようやく、そろそろ城が見えてきたな……と思ったそのときだ。
「姫様ー!」
お城の入り口で、何やら騒ぎが起きてるようだった。
私たちは近づく。
侍女らしき人が「姫様ー!」と連呼してる。
「どうした?」
サトル様が侍女に話かける。
「これは一条家のご当主様! ちょうどよかった、姫様がいなくなってしまって、困ってたところなのです」
「【りさと】姫が……?」
姫、ということは九頭竜家の御方だろうか。
「今日は一条家のご当主様がくるから、大人しくしてくださいねと言ったらこれです……もうっ!」
話しぶりを聞く限り、連れ去り事件というわけではなさそうだ。良かった……。
「探すのを手伝ってやろう。王も心配なされてるだろうしな」
とサトル様。
「しかし……参ったな。りさと姫は、少々特殊な【異能】を持っていてな。こちらの心を読んでくるのだ」
「心を読む……ですか?」
「ああ。異能や霊力でバリアしてても、こちらの思考は全て筒抜けになってしまう。それゆえに、こちらが探そうと近づいても、逃げられてしまうのだ」
心を読む
さすが、王族は凄い力をお持ちになられてる。
「前に脱走したとき、城の家臣総出で探して、見つけるのに一〇日かかったそうだ」
「と、一〇日……ですか」
「ああ。今回も苦労しそうだ。参ったな」
……ふと、私はまた視線を感じた。
ちら、と視線がする方を見やる。
王城を守る、何十もの外壁。
その上に……小さな女の子がいたのだ。
真っ赤な髪に、やんちゃそうなつり目。
そして……きらびやかな着物をきてる。
「サトル様。りさと姫って……もしかして、赤い御髪をしておりますか?」
「? そうだが。どうした」
「あ、いえ……あの……あの子じゃあないですか?」
私は外壁の上にいる、赤髪の女の子を指さす。
サトル様もそっちを見て、目をむく。
「りさと姫!?」
「!? な、なんでバレ……わーーーー!」
りさと姫は驚くと、外壁から転げ墜ちてしまう。
「サトル様!」
「わかっている! 【結】!」
サトル様は霊亀の異能を使う。
落下してるりさと姫を結界で包んで、落下を防いだ。
良かった……。
「くっそー! だしなさいよー!」
結界の中でジタバタと、りさと姫が暴れ回っていた。
「姫。お久しぶりです」
「さとるぅ! あんた変よ!」
「変……とは?」
「あんたから、心の声が聞こえなかった! そっちの幸薄そうな女からもっ!」
りさと姫が私を指さす。
「このものは異能殺しを持つのですから」
「! そっか……あんたがお父様の言っていた
それより、ちゃんとご挨拶しないと。
「初めまして、姫様。私はレイ・サイガと申します」
「知ってるわよ! 城の連中が皆あんたのうわさをしてたわっ!」
「そ、そうなのですね……」
「そうよ! それにしても……ふぅん」
じろじろ、とりさと姫さまが私を見てくる。
「ほんとに、心が読めないわ。あたしの異能が、かき消されてる。悟の心が読めないのも、その女があんたに触れてるからかしら?」
あ、なるほど……。
「あたしを見つけ出すなんて……やるじゃあないの! 認めてやっても良いわっ。この【
「心を読む大妖魔だ。りさと様は、寄生型能力者なのだよ」
と、サトル様が教えてくださる。
寄生型……?
でも、異形をしていないような。
「逃げないから、結界から出しなさいよっ」
「駄目です。このまま王のもとへ連れて行きます」
「こんなハシタナイかっこうを、お父様に見せられるわけないでしょー!?」
サトル様は結界の球体にりさと様を閉じ込めた状態で、城へと向かう。
「レイ、お手柄だ。まさか、探すのに一〇日かかる相手を、一瞬で見つけ出してしまうなんてな。すごいぞ」
それより、気になる。
檻に閉じ込められた、動物みたいな扱いをされてる……りさと様が……可哀想だ。
「あの……出して上げられませんか? 相手はその、年頃の娘さまですし」
「むぅ……まあ、そうか」
ぱちんっ、とサトル様が結界を解く。
ひらり、とりさと様が着地する。
じっ、と彼女は私を見つめる。
「なんか……いいわね、あんた。名前なんだっけ?」
「れ、レイと申します」
「ふんふん。レイ……レイね。うん! いいわ!」
びしっ、とりさと様が私に指を向けてくる。
「あんたを、第一王女専属侍女にしてやるわ……! 感謝なさい!」
えっと……。
その……。
「駄目に決まってます! レイは俺のです!」
ぎゅっ、とサトル様が私を抱きしめてくる。
「やだ! あたしレイ欲しい! レイ頂戴!」
「駄目です。レイは俺のです」
「レイ欲しい欲しい欲しい~~~~~~~~~~~~!」
二人が城の前で言い争う姿を、侍女の方達が目を丸くしながら見ていた。
「おひい様が初めての相手をあんなに気に入るなんて……!」
「一条家の花嫁さまは、そうとう……凄い御方ね……」
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