第57話

うちまで送ってもらいながら考えた。もう朝だ。彼といられるのはもうほんの少し。その中で決断しないといけない。どうする?


「まーや?考えごと?」


「うん」


彼は好奇心が溢れてる。私と違う世界にいる。私がもし、ここで断りを入れたら他の女神と出会ってしまうかも。私のこと思ってくれる人なんて、これから現れると思う?


「あなた、私結婚してもいい」


「え!じゃあ、婚姻届書くぜー!役所行くぜー!」


「え、わ!」


私の手を取り走る。うちの両親に挨拶しないといけないのに、もちろんあなたの家の人だって…


「えー?保証人とかいるわけー?」


役所にもう来ている。


「はい、今すぐに提出できるわけではないのでお持ち帰り下さい」


「まーやの両親にしよう」


「でもあなたの両親は?」


「あー、俺ね、施設育ちなんだわ。親はいない」


「そうなんだ…」


「さ、まーや!行こう!」


引っ張られたけど、私の家でしょ?どうすんのよ…。


「娘さんを下さい」


唐突すぎる。


「なんなんだその髪は!」


ドレッドの絡まった汚いやつ。


「私、東京大学で民俗学を研究しております。なので、アメリカに最近までおりまして、その時知り合った方にお礼にと、この髪型にされました。どうかお許しください」


「大学…そうだ、真綾はまだ大学生だぞ!」


「お、お父さん…私彼について行くって決めたから、辞める」


「そんな!金は私が払ってやったのに!」


「ごめんなさい」


「彼女は私の女神です。私はお金もなく、さまよっていたところ、彼女に助けられました。無性で食べ物をくれたのです」


「真綾、お前…」


「運命だと感じました。彼女なしでは、私はもう生きられません」


「…君は真綾といつから付き合っているんだ?」


「1週間くらい前?」


「なんだ君は!おかしいのか!」


「運命を信じているので。必ず彼女を幸せにします」


嘘くさ。でも…一緒にいたら、飽きないだろうな。やはり親には反対されて追い出された。だけど、


「私、あなたとどうしても今結婚したい」


「運命、だから?」


「私を、違う世界に連れてってほしい」


「おー楽しい世界ね?いーねぇ」


「店長に保証人になってもらう!」


「でもさーご両親がダメって言ったっしょ?」


「家を出てでも、あなたがいい」


「おおう。俺、愛されてる」

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