第55話

次の日、お店に現れた。

ので、


「あの、私…連絡先も知らないんですけど…」


「ん?俺の連絡先とかないよ?」


「携帯ないの?」


「ない」


信じられない…この人原始的なの?


「まーやさん、今日仕事終わったら会える?」


「え、はい」


「迎えに行くよ」


なんだこれ、彼女みたい。


「坂下さん、あの人ストーカーじゃなかったんですか?」


またとしきくんと休憩時間一緒だ。


「え、あぁ…なんか友達みたくなって」


「警察とか呼んだほうが…」


「大丈夫です」


なんか、としきくんのことどうでもよくなった。くじらさんは、食べ終わったのかもういない。仕事終わりに外へ出たところ、彼が待っていた。


「裏で待ってたけど、ここも迷惑だった?」


「いえ、大丈…」


すると、裏口のドアが開いた。


「まーやちゃん、明日のシフト…?」


「あ、店長、この人悪い人じゃないので、大丈夫ですから!」


「店長さん、こんにちは」


うーん、どう考えても明らかに不審者じゃん!


「あ、夜道怖いから一緒に帰ってくれるみたいで、お疲れ様でしたー!」


彼を無理やり引っ張って連れて行く。が、止められた。


「まーやさん、店長さんシフトのことで呼び止めたんじゃね?」


「あ!店長ごめんなさい!」


急いで引き返す。


「まーやちゃん、明日は休んでもらえる?明後日と交代してほしいんだけど…」


「いいですよ」


「おーう!おやすみなの?ショック!」


「じ、じゃあお疲れ様でしたー」


もー、なんでこんなに怪しい動きをしてるのよ!慌てて立ち去る。


「まーやさん、待ってよ」


「あの!なんで携帯持ってないの?てゆーか私はあなたのこと知らないんだけど!仕事してるの?どこ住んでんの?」


「おおう、落ち着けよ。今からその職場に行くからさ」


「え、え?」


なんとなくついて行く。なぜか、大学に行くみたいだけど…ここは国立で、名門なとこ。部外者は入りにくく…て!?


「入るの?」


「もうちょっと歩くけど、疲れない?」


「いや、そんなことじゃなくて…」


彼は清掃員?こんなぼさぼさ頭の?


「ついた」


なにやらカードをかざして部屋に…え?


「だめだよ!そんなことし…」


「閉まるぞ、入って」


「ひゃ!」


無理やり押し込まれた。


「よーっす!お待たせ~」


「なんの騒ぎだ?…女子?」


な、なんか人がいるんだけど。不法侵入なんだけど、騒いでしまったの私なんだけど…


「うん、俺の嫁ね?」


ぐいっと引っ張られて前に出される。


「は?花田の言ってた女神?」


「そー」


「ありえない。あなたよく…」


どうしよう、なんなのここ。私、実験されるの?


「ねぇ…この子泣きそうなんだけど」


「おーう!まーやさん、大丈夫?」


「あの、全然わからない」


「花田無理やり連れてきたんじゃ…」


「ないない。まーやさん、ちょっと座ろうか?」


「ここはどこ?」


「花田、やっぱり連れ去りか?」


「だー!ちがーう!誰か説明してー!あ、レポートまとめねば」


私を置いてどこかに行ってしまった。


「花田信じられない。あなた、大丈夫?」


私とそんなに変わらない女の子が心配してくれてる。


「あの、私は…ただの店員で」


「まじで女神なんじゃん。連れ去られた?」


私と同じくらいの男の子もいる。


「そ、そのー、悪い人じゃないって店長が。で、あの、仕事してるのか聞いたら連れて来られて」


「やっぱり連れ去りじゃん」


「あなたは花田なんかによくついていったわね」


「…私もよくわからなくて」


「花田は今レポートで忙しいから話す暇もなさそうだな」


「なんのレポートですか?大学生なんですか?」


「いやいや、あいつここの臨時職員だよ」


「え?先生?」


「私たちはここのゼミ生。花田は研究員みたいな人。ほぼいないけど」


「…私はどうしたらいいですか?」


「さぁ?」


どうしよう。おいてけぼり…


「と、ところで、来週海外に行くって本当なんですか?」


「そうだけど」


「どこへ?」


「さぁ…」


えぇー。

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