花田真綾の過去
第52話
変なお客様さんだった。髪の毛がぼっさぼさだし。あれってドレッド?
「まーやちゃん、これさっきのお客さんにあげて」
「え、店長でもあの人、お金ないって言ってましたけど…」
「可哀想だからあげておいで」
ハンバーガーを持たせられた。お人好し店長がそう言うんだから、仕方なくあげに行ったら…
なぜかその人に、気に入られてしまった。
「店長のせいで変な気起こされたんですけどー」
「あの人は悪い人じゃなさそうだから大丈夫だよ」
店長どんだけお人好しなんだよー
次の日もバイトだった。着替えていると、店長の奥さんが私を呼びに来た。
「なんか、
「え、誰ですか?」
「さぁ、ちょっと変わった感じの男の人なの」
「誰だろう?」
「知らない人かもしれないから、遠くから見てほしいの」
「はい…」
なんか怖い。そっとお店を覗くことに。
「あ!」
カウンター横に立ってるあの人、昨日の人?私の名前よくわかったな…。
「真綾ちゃん、どう?知り合い?」
「…昨日来たお客様です。なんか気に入られてしまったみたいで…」
「怖いなら警察呼ぶよ?」
「いや、大丈夫です。店長が悪い人じゃないって言ってたから…」
恐る恐る、後ろから近づく。
「お待たせ致しました。お客様、なにかご用でしょうか?」
ぱっと振り返る彼は満面の笑みを浮かべていた。
「おお!女神!待っておりました。昨日のハンバーガー代を支払いに参りました」
え、言い寄られるのかと思ってたのに、なんだこれは。
「あの、それは店長があげろって言ったのでお代は結構です」
「いや、支払わせて下さい」
「え、あの、店長呼んできますから…」
ということで、まだ来ていない店長を奥さんに呼んでもらい…ふくよかな店長を彼の前へ押し出した。
「お待たせしました。お代は結構ですよ?」
「いや、申し訳ないです。払わせて下さい!お願いします」
「では、また注文して下さい。それなら気が済みますか?」
「…俺としたことが。営業妨害をしてしまって申し訳ない。では早速注文させて下さい!女神!」
「女神?」
店長の前でこの人は何を言うか。
「ええ、彼女のことです」
「店長、この人お金あるんですか?怪しいですよ?」
「金なら両替したのであります!女神、結婚して下さい!」
またそんなことを…。
「…あなた何言ってんですか?」
「失礼しました。お名前は…
「あの、私の名前わかんないのにどうやって私を待ってるって言ったんですか?」
「それは、坂下さんの特徴を述べたまでです。髪の長さ、色、口調などですよ」
「…店長、この人やばいんじゃないですか?」
「…あの、お客様」
「失礼しました。注文させて下さい」
「…まーやちゃん、よろくね」
「えー、店長ー」
「テリヤキバーガーとポテトとコーラで。サイズは…」
この人、なんなんだ。普通に注文したし。
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