花田鯨の昔話

第49話

「いらっしゃいませ」


コンビニアルバイトとして働く日々。

あー、シフトもっと融通気が利かないものか…。夜勤多いし、すごい迷惑な遅刻魔がいるし無理なのか?めちゃくちゃ頭悪いやつと組まされるとか勘弁してほしい。いるかさんと遊びにも行けないじゃん。しかもー、あの家にいるとイチャつけないんすけど。

仕事帰りになんとなく、先人さんのところへ寄った。


「おう、珍しいな。引っ越してからどう?」


「先人さんすごーく優しいですねー!お邪魔しまーす」


「うるせーよ」


そう言いつつお茶出してくれるとか。かっけー!


「あのー、俺すごい肩身狭いんですよね」


「だろうね」


「夫婦なのに部屋違うし」


「そうか」


「しかも、そこの息子と同じ部屋だし」


「えーまじ」


「しかも息子と同い年だし」


「…そりゃないわ。厳しい仕打ちだな」


「でしょ?しかもその子めちゃくちゃかっけーんすよ!都会っ子で、もーレベル違い。同い年とは思えないかっこよさ。高校生だしキラキラしてるんですよねー」


「あ、そう」


「しかも金髪ですよ?ピアスすげーしてるし、ヤンキーかと思いました」


みのるもそんなんだったけどな」


「それとはまた違うんですよ!彼はバンドしてて、ビジュアル系かもしんねー!やばー!」


「落ち着けよ」


「すみません。で、先人さん。俺は友達のように振る舞うか、兄のように振る舞うか悩んでるんですよ」


「兄じゃないよな?」


「そう、なんですよねー。兄にはなれない。悔しいなぁ。でも妹いるし、ちゃんと兄になれてる。そうだよ!」


「自分で納得してんじゃん」


「あ、そうそう。いるかさんのお兄さんの嫁からは、俺はかっこよく見えてるっぽいです!やばくないっすか?三角関係とかになったら、ややこしすぎるし!」


「落ち着けよ」


「ま、ありえないですよね。いるかさんのお兄さんなんかかっこいいんですよね。ワイルドで」


「ふーん」


「奥さんは、結構ブスなんですけどね」


「お前なぁ」


「全然好みじゃないんで大丈夫ってことですよ。でも、お兄さんはベタ惚れで。その奥さんは真綾ってゆーんですけど、息子は綾で娘は真矢なんです。お兄さんはまーやって奥さんを呼んでます。で、息子のことはアヤってみんな呼んでてまじややこしーんです」


「話長くて、理解できなかった」


「まぁ、流してください。ではそういうことで、さようなら」


ふう、すっきり。

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