第48話
目覚めたら朝だった。居間に行くと、綾くんは普通に朝飯食ってるし。昨日のは夢?
「おはようございます」
普通に礼儀正しく綾くんから挨拶された。
「あ、おはようございます。あのぉ〜綾くん、昨日は何時に帰ったの?」
「ええっと、さっき?」
シーーン。夢じゃなかったのかよ!
「どうゆーこと?綾はどこ行ってたのよ」
いるかさんはすでに起きてちゃっかりご飯を食べていた。そうだ、いるかさんに怒鳴り散らされるがいい!
「バンドの練習してて」
「えー!なにそれかっこいいー!」
だめだこりゃ。甥っ子には甘いな。
「で、でも学校ではそういうのだめって言われてないのかな?ねぇ、お兄さん」
無言でご飯を食べていたいるかさんのお兄さんにも話を振ってみる。
「別にばれなきゃいいだろ」
だめな父親だ。うちの親とあんまり変わらない。
「そ、それにその髪、なにか言われないの?」
「特には?」
そんだけ?とやかく言うなって?そういうことなのかい?
「お兄ちゃん、困らせてるよ!ちゃんと言わないと」
「…別に校則とか厳しくないので…大丈夫なんです」
「へ、へぇ」
そんなクズな学校、信じられないぞ!
「なぁに?盛り上がってるねえ」
奥さんがやっと登場。今起床したということなのか?
「まーやおはよう!優くんって朝から騒がしい」
俺そんな騒がしかねーし!
「ねぇ綾、今日店番できる?」
奥さんは旦那の話無視した。
「うん、いいけど」
え、お店手伝ってんの?え、偉いしー
「お願いね。綾が帰ってきたらいるかちゃんの家行くから」
「え、俺のうち?ですか?」
なんなんだ?いるかさんはうちでお茶会でもする気なのか?
「真綾さんが荷物まとめるの手伝ってくれんのよ。昨日決めたの~いちいちうるさい」
「そ、それはもうここに引っ越すってこと?」
「うん。荷物全部ここに入る…かなぁ?」
「そんなん適当に入るだろ。入らなければ売ればいいだろ」
「人のもの勝手に売ろうとしてる!最悪ー!」
「さっさと引っ越してこいよ。いるかには働いてもらうぞー」
「なんでよ!お兄ちゃんがちゃんと働きなさいよ!」
「まぁまぁ、いるかちゃん、ご飯を食べてね?」
この2人が騒がしいじゃないか!
「真綾さんやっさしー!てゆーか、お兄ちゃんの名刺見たんだけど、この社長ていう肩書きなに?ただの店長でしょ!」
いるかさんは棚に載せてあった名刺を振りかざす。そういや、お兄さんの名前聞いてなかった…。名刺を覗き見てみた。
「花田 鯨」
読めない!なんて読むんだ?さけか?あじか?なんか魚っぽいんだけどなぁ…。
「俺の店だし」
「社長じゃないしー!バカみたい!」
「社長でいいだろ?」
「だめだし!」
名前…
「じゃあ俺、学校行くから」
いつの間にやら準備してた綾くん。そうだ!
彼の行く方を追いかけ、捕まえた。正確には肩を叩いただけ。すると、びっくりした顔でこちらを見た。いやぁ、綾くんかわいい顔してるしモテるだろぅなぁ。
「なんですか?」
は、質問を一瞬忘れてた。
「お父さんの名前なんていうの?」
「え、くじらですけど」
げー!海の生き物シリーズな兄妹だったのか!すげいやー!
「あーそうなんだ。さけとかあじかと思ったよ」
「え、漢字が読めなかったってことですか?」
しまった!余計なこと言ってた!
「そ、そうだよ。どうせ俺はバカだし!」
「いや、そこまで言ってな…」
「綾くんはイケメンでいいなー。モテ男羨ましー、しかも勉強もするってか?まじやべーよ?」
「ちょっと優…なに言ってんの。綾を妬まないの!」
いるかさんに後ろからど突かれ我に返った。みんなに聞こえるような声が出ていたとは。は、綾くんにどん引きされた?
「俺は全然イケメンじゃないですし、モテないので。じゃあ行ってきます」
これは、天然系イケメンではないか!自分で理解していない!高原くんに似てるのかな?
でもいるかさんの甥っ子だし…友達みたくしていいのだろうか?
「ちょっとー綾を困らせないでよね!」
「ねぇ」
ドアから出て行った綾くんを思い出しながら思った
「りょうってなんで誰も呼ばないの?イケてる名前なのに」
「え、なんでかな?ねーお兄ちゃん、綾のことなんでりょうって呼ばないの?」
「ん?まーやの
「綾もりょうって呼んでも反応しないかもね」
奥さんは楽しそうに笑った。
「じゃあさぁ、アヤに改名したら?」
「めんどくせーからいいじゃねぇか」
だめな父親だな。
「まぁ、綾はよく重要書類のふりがなをアヤって書いてやり直し多いらしいから、りょうって読むことは周囲にいつも言ってるらしいけどな?」
それでわざわざ俺にも教えてくれたのか。綾くんが一番めんどくせーじゃん。改名しろよ!って思うけど、今更って感じちゃうのかな。それが花田家では当たり前的な?ちょっと変わった花田家に嫁いでしまったよ。
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