第35話

売りさばいてやる!コンビニにチケットを置かせてもらい、ポスターも貼り、常連さんにアピール。もちろん社員さんにも。


「嫁が出演するんで、来てくださいよ」


「え、嫁って…女優なの?」


「ええ、駆け出しですけど」


「すごいねぇ」


「このチケット買ってください」


「え」


「これだけ売らないといけないノルマなんです」


「じゃあ、しょうがないから…」


というような感じで買ってくれるのだ!もちろん近所の人には徹底して買ってもらっている。


「いるかさんが初舞台出るんで、もちろん来てくれますよね?」


「いや、買ってくれオーラすげーよ」


高原くんのお兄さん、先人さんにはつっこまれた。


「ま、そうなんですけどねー」


「いいよ、買うよ」


「まじですか!もちろん2枚ですよね?」


「はいはい」


「お買い上げありがとうございます」


「事務的だな」


さらにさらに、お隣さんの川中先生のとこにも直撃!嫁の碧唯あおいさんしかいなかったけど、とりあえずチケットの件を尋ねてみる。


「えー?チケット?」


「はい、いるかさんが出演します」


「ちょい役なんでしょー?」


「そうですが…」


「私ね、ここの劇団員に知り合いいるんだよね~」


「まじっすか!え、じゃあ買ってくれないんですか?」


「すでに買っちゃったもーん。あ、でも一枚なら買ってあげる。しのぶの分」


なぜ、夫の分は買ってないんだ?一緒に行かないつもりなのか?


「お、お買い上げありがとうございます」


「偉いのねー。チケット売りさばいて歩いてるなんて」


「いえ、まだまだですよ」


そんなこんなで、なんとか全部売りさばいた。そのことを当の本人、いるかさんに報告すると…


「やるねぇ!私褒められちゃうじゃーん?」


「よかったね」


「当日、楽しみにしててね」


「でも、ちょい役でしょ?どうなの?見る意味あるの?」


「普通に見てよね?楽しいから」


どうなんだか。

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