都会での日々

第32話

引っ越した翌日。いるかさんは仕事で、俺は届いた荷物の確認。その後は、婚姻届けを提出に行ったり手続きしたり。終わったら、なけなしの金で指輪を買う。

そして、バイトの面接。家の近くで、前働いていた系列のコンビニだから、営業スマイルで即合格した。そんで明日から出勤である!

家に帰ると、既にいるかさんが帰っていた。だらけてやがる。


「お帰りー。どこ行ってたの?荷物全然片付いてないんですけど?」


「手続きとかしてたし。あとバイトの面接」


「はやっ。で?どうだった?」


「もちろん合格だし。明日から働く」


「はやっ。スピード出しすぎよ」


「で、これ」


ポケットから、箱を取り出した。


「ん?なに?」


「あげる」


「なに、開けるよ?…指輪?」


「かして、ほら手出してよ」


「うそ、くれんの?」


「くれるし。これは結婚指輪。遅れてごめん」


いるかさんの指にぴったりはまった。


「ううん。ありがとう。サイズぴったり…。なんで?」


「いるかさん自前の持って行ったんで」


「あ、そう。頭いいね。こういうときだけ~」


「は?頭元々いいし」


「どこが?」


「ひどっ。…さて、この荷物なんとかしないとな」


積み上げられたダンボールを見ているだけで、やる気が出ない。


「あれ?優のは?」


「あ、指輪ならポケットに」


「私がつけてあげる」


いるかさんに指輪を取り上げられ、指にはめられた。


「うわ、似合わねー」


「そう?いいと思うけど?ついでにピアスしちゃう?」


「は?なんで?」


「いけいけにしてみる?」


「やだよ」


「あら残念」


「なにが残念なんだよ」


アクセサリーなんて初だ。いけいけとか勘弁してくれ。いとこの実くんは、アクセサリーにまみれてヤンキーになっちゃったからなぁ。イメージ悪くなるのは困る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る