第31話

いるかさんは本当に次の日行ってしまった。手続きや荷造りを一人でするのはハードではあったが、なんとか予定していた一週間後には東京へと飛んだ。

到着後、高原くんのお兄さん先人さんが教えてくれた物件まで到着した。タクシー代高い。


「あ!足助くん?…だよね?」


先人さんは待っててくれた。しかし、不審そうに見られる。


「はい。そうです」


「なんか、でかくない?いつのまに?」


「えーっと、最近?」


「なんかみのるみたいだな」


「あー実くん?」


「え?実と知り合い…?は!お前は足助か。親戚なのかな?」


「はい」


「そうか。そういうわけで高いんだな」


「そんなことより、先人さん。探して下さりありがとうございます」


「いやいいよ。ゆうに頼まれることあんまりないし」


「そうですか」


「…で?なんで一人?」


あ、いるかさんまだ来てないし。


「それが、まだ連絡もなくて。場所はメールで伝えてはいるんですけど」


「てか、なんで別々に来たの?」


「いろいろあるんで」


「あ、そう」


そんな話をしていると、タクシーが止まりいるかさんが降りて来た。


「すーぐーる!」


「遅いよ!」


「あらぁ?高原くんのお兄さん?」


「そうです。はじめまして、高原先人です」


「かっこいいですねぇ!」


先人さんは驚き、戸惑った。初対面の人に普通言わないんですけど。


「いるかさん、ちゃんとして下さい」


「あら、失礼」


「あの…足助くん、この方年上なの?」


「ええ、そうです」


「何かしら?」


「いえ」


「あ、そうだ。紹介遅れましたが、こちら、妻のいるかです」


「よろしくね!先人…さん」


「どうも。…あ、ちょっと待ってて下さい」


先人さんは思い出したかのように、アパートの部屋へと行ってしまった。なんだろ?

2人で顔を見合わせて考えた。


「結婚祝いくれるのかしら?」


「もしかして、結婚式のプランを提示するとか?」


少し置いて、先人さんが戻ってきた。誰かを連れて。


「お待たせしました。こちら、妻の柚香ゆかと息子の陸人りくとです」


「あらぁ、お子さんいらっしゃるのー」


「どーも、よろしくお願いします~」


「えぇ」


先人さんの奥さんといるかさんは2人顔を見合わせ考えはじめた。


「あの、奥さん…お久しぶりです。足助です」


無視されそうな勢いだったので、2人を割って話かける。


「あれ!なんかすごい大きくなってる!…それで、奥さん?私とあんまり歳変わらないんじゃないですか?」


「え?そ、それはぁ~」


2人は勝手に話し始めた。身長ネタはやはり持たない。


「おたくの足助くんって学生でしょ?先人の弟くんと一緒って聞きましたよ?」


「そうですよ?お宅の先人さんもまだ若いんじゃないですか?」


「なんか、盛り上がってますね…先人さん」


「おいいつまで話してんだよ。早く部屋行こうよ」


おおー。先人さんは高原くんと違ってぼーっとしてないのか。


「あーごめんねぇ。さ、奥さん行きましょうねぇ!」


先人さんと高原くんの趣味は似てるのかな?元気っ子ってとこ。部屋に案内されたあと、先人さん夫婦は帰って行った。俺たちの部屋は2階で先人さん夫妻は1階。


「てかー、荷物は?」


不服そうないるかさん。先人さんの前とは全然態度違うんですけどー


「今日は届かないよ」


「はぁ?どーしてよ!」


「荷造りそんな簡単にできませーん。明日届くから…布団だけは買いに行こう」


「もー!」


「ちゃんと準備したんですけど」


「あらごめんね。…まぁ、ゆっくりでいいわね」


「あ…そうだ。夢が決まったんだった」


「んー?急に何?」


「コンビニ店長になろうと思って」


「え、そうなの?」


「俺、頑張るよ。子供のために、いや家族のために」


「あら、頼もしいわ!」


「そうかな?」


いるかさんは劇団員になって、俺はコンビニでアルバイト始めて。夢に向かって、東京での生活がスタートした。

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