第23話
3月に突入しても、膝は痛い。身長は伸びる一方だ。ズボンの裾をどんどん長くしてを繰り返して面倒だ。いつものようにバイトをしていると、いるかさんがやって来た。
「あー、また身長伸びた?」
「そうです」
「なんで、そんなに伸びちゃうの?だってこーんなに小さくなかった?」
こーんなには、いるかさんよりだいぶ低い位置に。そこまで小さくないし!
「確かに小さかったけど、急にね」
「私ーめっちゃ見下ろされてんですけどー!」
見上げながら怒られるという、謎な気分。
「それ、クラスの女子たちも一緒だと思うけど」
「えーまじ?なんで?」
「なんでって…あ、親父が高いから?」
「そうなんだ!お父さん大きいんだね」
「でも、母はチビだよ」
「ふーん、お父さんに似て大きくなるのかぁ」
「今更って感じだけど」
「確かに今更よね?」
「もう高3になるのに」
「…そっか、まだ若いって」
「まぁそうでしょうとも」
ふと、思い出した。
「…高原くんは学校辞めるかな」
「え?お友達?どうして?」
「彼女が卒業するから」
「それで一緒に卒業したいって?」
「いや、その彼女はたぶん海外に行っちゃうと思うから」
「そうなんだ。聞いてみたら?」
「それが最近しんみりしててね…元気なさすぎるんだよね」
「もしかしたら振られちゃったとか?」
「それはないと思うけど、いつもほったらかし」
「彼のほうがグイグイいかない感じなのかな?」
「そう。主導権は彼女」
「大変ね」
「そうだね」
学校での高原くんは、やはり元気がない。友達は集まっているのだが、無視してるからみんな可哀想。高原くんも…。
クレアさんはというと、最近モデルの仕事が忙しいらしく休んでいる。ジャムさんは、ここ最近見ていない。忙しいということは、売れているということで、嬉しいはずなんだが、高原くんは全然嬉しそうじゃない。そういえば、高原くんにクレアさんに告白したことも、振られたことも話していなかった。高原くんと話すことといえば、学校のこととか…そのくらい。だって、あの取り巻き。みんな高原くんを心配してるんだけど。
いつものように、バイトに向かっていると、艶耀と会った。
「やっほー!優くん」
相変わらず元気だな。
「よー艶耀」
「なんか身長伸びたんじゃないのー?」
「そうです」
「すげー」
目をキラキラさせた。
「ところで、艶耀は今どこに住んでるんだ?」
「和希さんとこ」
「高原くんとこは?」
「高原さんは元気なさすぎて。近寄りにくいってゆーか?」
「…高原さんって」
「だって会ってないし」
「ふーん。で、和希さんとはうまくいってるの?」
「ん?」
「しらばっくれないでよね」
「別に前から普通だよ」
「じゃあなんで、家を出たんだよ」
「だからー、娘がまじでキモいんだって!」
「…ほんとにそんだけの理由?」
「そーだよ!言ったし!」
「はは、艶耀は自由だな」
「ん?」
「バイト行くから、じゃ」
「うん!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。