第20話

次の日には、寮を出た。学校も休みで、バイトもない日だった。午前中は手続きを済ませ、午後には自宅へ向かった。艶耀は、預けられてるという和希さんのところへ荷物を持って帰った。

気付いたら、久しぶりの自宅に到着してしまった。ドアの鍵が開いていた。誰かいるのか?


「ただいま」


「あー優!何しに来たの?」


バットタイミング!足助守のお兄ちゃんがいるではないか。玄関で、今まさに靴を脱いでいた。


「普通に家に帰ってきたんだけど」


「へぇ?家出したくせに?生意気」


「父と母は?」


「いるよ?ねー優来たんだけど!なんなのー?」


その言い方なんなんだ…。


「おい、優。お前の部屋ホコリだらけだぞ?」


久しぶりに会った親父は、全く変わらない。


「てゆーか荷物そんだけとか?ホテル暮らし的な?」


「優…お腹すいてない?大丈夫?」


母ものこのこと出てきた。あー、相変わらずウザい。


「別に。食べてきたから」


「ねー優?なんで帰ってきたの?どのつらさげて?」


守お兄ちゃんも、相変わらず嫌味なヤツだ。


「受験あるし…。寮出たから、浮いた金は守お兄ちゃんの治療費に回したいだろうし」


「な、何言ってんの?」


「守お兄ちゃん、今冬休みなの?大変だね」


守お兄ちゃんは、やっと靴を脱いだ。それで、やっと俺も靴を脱ぎ上がることができた。


「おい優!」


「バイトは今まで通りする、いいよね?」


立ち上がって、親父の方を見た。


「おー、いいぞ?」


さとし兄ちゃん、なんか優変だよ!っていうか…なんかでかい?」


「そうだな…制服が短く見えるな。お前身長伸びた?」


「そ、そうだけど」


「ふーん。だいぶ伸びたなぁ」


「そうでもない」


親たちを置いて部屋に向かおうとしていた所、


「お前膝でも痛いとか?」


「そうだけど?」


歩き方とか見られたのか?親父に不審そうに見られた。


「まじか、まだ伸びるわそれ。成長痛ってやつだな。ま、俺の制服もあるし伸びても大丈夫だろう」


身長がそんなに伸びる?…のか?ということは?


「俺、守お兄ちゃんより伸びる?」


「おう、もう越してるな」


「えーなにそれ!キモい!」


「まぁ、どこまで伸びるかわからねぇけど?」


「…どこまでって?」


「俺は高1で190まで伸びたけどな。みのるもたしか高3で伸びたんだったっけな?」


実というのは、もう一人の叔父さんの息子で2m近い身長である。そこまで伸びたら、巨人になるし。そこまでじゃなくていいけど、身長は伸びるのは嬉しいものである。なんだかんだあったけど、無事帰ることができた。

しかし、家に長居することはできないので、いるかさんの家に行った。が、いない。…仕事か?

そういえば、まだ仕事先のドーナツ屋には行ったことなかったので…初めて行ってみた。


「いらっしゃいませ」


知らない店員さん。うーん、


「あの、店長はいらっしゃいますか?」


「はい、お知り合いの方ですか?」


「そうです」


少し経って、いるかさんはやって来た。黒エプロンで、店長のネームプレート。


「あれ?うそ!優?」


「どーも。お仕事中すみません」


「どうしたの?」


「寮を出ました」


「うそ!なんで?」


「自立したいから」


「逆じゃない?家帰ってるけど?」


「足助家は変わってんの」


「ふーん、そうなの」


「今日、遊びに行ってもいい?8時まで?」


「うん。優が暇なの珍しいね」


「今日は暇なんだよね」


「楽しみ。仕事頑張るね」


「うん、じゃまた後で」

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