第15話
「優、あのねぇ」
いるかさんにぎゅっと抱きつかれたままであったが、彼女は話し始めた。
「私、舞台女優になりたいって思ってるの。夢みたいな話でしょう?」
「なんで?なれるんじゃない?」
「どーして?」
「なんとなく?」
「今更とか思わないの?私30代後半なんですけど?」
「別に関係ないんじゃない?年齢とか」
「そう、ありがとう。久々にオーディション受けようかな」
「アイドルになっちゃうの?」
「ならないー。昔ね、一度だけ受けたんだけどダメで。安定求めちゃって、店長になっちゃった」
「店長すげぇよ」
「私は、大学生活ほぼバイトだったのよ。で、留年繰り返してたー」
「だめじゃんそれ」
「しょうがないのよ。いつの間にか責任ある仕事になっちゃってさ~ついついね!」
「バイトしすぎだよ」
「あら?私は高校のときはバイトしてないわよ?」
「えー珍しいのかな?」
「私の世代ではね?」
いるかさんの足と、心落ち着いた所でやっと帰ることになった。それまでずっと抱きつかれていたことにも気がつかなかった。
「今日は、私の家に来ていいよ」
「や、だめでしょ。家の人いるだろうし」
「一人暮らしよ?もういい大人だし」
「でも」
「行こう」
無理やり連れていかれた。
「ほら見て?焼けてるー!」
いるかさんの自宅に到着。あんなに、俺の家に行こうとしてて、自分の家は勧めなかったくせに。最初から、家でよくない?で、今は隣に座ってのんびり麦茶飲みながらいるかさんの手を見てるという。
「あーほんとだ。日焼け止め塗ってないの?」
「塗ったけど濡れちゃったのー」
「海に入るからじゃん」
「いいの」
そう言われたあと、いきなりキスされた。
「私のやりたいようにしちゃうけど?」
「え、肉食系?イルカって哺乳類だよねぇ?」
「今、呼び捨てにしたわね?」
「今のは動物のことで、イルカさんはいるかさんとしか呼ばないよ?」
目が覚めると、隣りには女の人。…あ、ここはいるかさんの家か。
「ん、優起きた?」
「…寮かと思ったし」
「あー、あの寮ね。いいとこだよねー」
「家よりは。寮住んでたんだね」
「そーよ。あこもね~」
「その情報いらねぇよ」
「私さー、一人でいたくないの」
「何急に」
「いつも一人になっちゃうから。彼氏いても、私みたいなのだめなのよ。重いしうざがられるんだ」
「いるかさんうざくないじゃん?」
「ありがと。じゃあ、また家に来てくれる?」
「いいよ?俺でよければ?」
「ありがと。あと…演劇の練習も手伝ってほしいな?」
「いいよ。聞いときゃいいの?」
「うん、嬉しい。頑張る。ぎゅってしてあげる」
「どうも」
「髪さらさらだね」
「ちょ、ぐちゃぐちゃしないでよね?」
「あーまつげ長い!私と変わらないんじゃないの?」
「これはコンプレックスなんですけど。男はいらないのに」
「私からしたら羨ましい!」
「このまつげいじられてんですけどー」
「そう?きっとみんな羨ましかったのよ?」
「そうだといいな」
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