第11話

傷ついた心のまま、バイトへ。あーやる気でない。店長もいるし。


「いらっしゃいませ」


いつものように、レジに入っていた。


「あれ?足助くん?元気ないんじゃないの?」


「ああ、いるかさん。また振られました」


「また?まぁ、私も振られてばっかりよ」


「ふーん、振られるほうなんだ」


「そーよ?重いらしいの」


「よ!いるか!いらっしゃい!なーんか元気ないじゃん?失恋か?元気なくない?」


うるさい店長あこさんが、裏から出てきた。


「そーよ?あこちゃん、慰めて?」


「よーしプリンをやるよ!」


「なにそれ!もっといいのにしてよ!」


「あのー、俺振られたんで、何か下さい」


「は?どーでもいいし!いるかは自分で好きなもの買ってけよ」


「あこのけちー!」


「まったくです。仕事して下さいよ」


「足助くんは、自分を磨けや。身長と顔なんとかしな!」


「は?それってどういうことでしょうか?そっくりそのままお返ししますが?あこさん」


「うざー。店長侮辱していいと思ってんの?」


「まぁー言うわねぇ」


「まったくー!げ、業者から電話だし。足助くん仕事しとけよ?」


あこさんは電話に出るために、休憩室へ去って行った。まったくうるさい店長だ。店内は、いるかさんと2人だけになった。


「ねぇ、足助くん。私のことどう思う?」


「え、普通にかわいいですよ?」


「あら、ありがとう。じゃあさぁ、私と付き合わない?」


「え?俺?」


「うん。試しにどうかしら?」


「…いいですけど」


「あら、あっさり」


断わる理由なんてないからなぁ?別に嫌いじゃないし。


「バイトばっかりで、どこにも行けませんが、いいんですか?」


「いいよ。私がここに来るから」


「…それって今までと変わらないんじゃ?」


「んー、じゃあいつもより来るようにするー」


「そーですか」


「あとー、名前で呼んでもいい?すぐる、だっけ?」


「はい。じゃー俺は今まで通りいるかさんで」


「呼び捨てでいいけど?」


「慣れた呼び方だし別によくない?」


「あと、敬語じゃなくていいって言おうと思ったけど…結構タメ口よね~」


「そう?」


「そー、それよ」


「素朴な疑問なんですが、俺のこと好きなんですか?」


「素朴ねぇ、んー普通かな?でも、話しやすいから。いいかなぁって思って」


「そんなもんですか」


「そーよ。そんなものよ?」


「お?いるかまだいたのかー!」


電話が終わったのか、あこさんが出てきた。


「またねー!」


いるかさんは手を振って、店を出て行った。


「あいつ、元気になってんじゃん!なんで?」


「あこさんの慰めいらなかったですね」


「まーね。てかーいるかは何も買わずに帰ったのか?」


「物色だけしてましたよ」


嘘だけど。


「迷惑な客だな」


そんな客と付き合うことになりましたが、店長には俺からの口から言えないな。面倒だし。

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