第9話

雨飾さんとお話してから、授業には全く集中できず。そのままバイトへ向かう。いつものように仕事して、寮へ帰る。


「えんよー?いるー?」


「あ、お帰り!」


「ふ、ふふ、実はさ~」


口元を歪めながら、今日の話しをしようかと思っていたところ、チャイムが鳴り突然の来客。まったく誰だよ。高原くんかな?


「こんばんは!」


扉を開けて驚いた。今まさに話そうとしてた雨飾クレアさんではないか!


「ここ、足助くん住んでたんですね?」


「え、はい」


「私、前の部屋に引っ越してきました。これ、つまらないものですけど、どうぞ」


タオルを頂いた。…って、前の部屋って向かいの?この階は2人だけの世界ではないか!


「あれ?優くん、その人は?」


「あ!艶耀、この子はクラスに転入してきた雨飾クレアさん」


「市川えんよーです」


「よろしくお願いします」


「あのー、外国の人?カタカナっぽい名前だし」


「私はクウォーターです」


「水?」


「えんよーちゃん、違うよ。若干外国ってことだよ」


「ん?」


「まぁ、なんとなくでいいって」


「なんか、人形みたいでかわいいですね!」


な!艶耀が口説いてる!なんてやつだ!


「ありがとう。私モデルをしています」


「そーなんですね」


「よかったら少しお話しませんか?」


いきなりデートの約束?そんな…


「どーぞ!部屋に入って下さい!ね、優くん?」


えー、勝手に。


「ありがとう」


美しい笑顔の彼女が、部屋に入ってゆく。いったい、何の話しをしようとしてるんだ?

そして彼女は部屋に入ると、すぐに座り、勝手に話し始めた。


「ジャムさんのことで、聞きたいんですけど!足助くん」


「え?ジャムさんのこと?」


「ジャムさんは普段どんな人ですか?モデル事務所が一緒だけどよく知らなくて」


「ジャムさんのこと俺もよくわかんなーい!知りたい〜」


「まぁまぁ、艶耀は黙ってて。えーっと、ジャムさんはほとんど学校行ってないし勉強もしてないですね」


「そうなの?優くん?」


「そーです」


たぶん…。


「それで、どこに住んでいるんですか?」


「高原くんと住んでますよ?いや、ジャムさんの家に高原くんが住んでるんですが」


「2人は一緒に住んでるんですか?」


「えぇ」


「いつからですか?」


「え?えーっと、学校入ってからかな?」


あまり突っ込んだことはわからない…。


「いつも2人は一緒にいるんですか?」


「そうですねぇ」


なんという質問攻め。好奇心だろうか?

こうやって、雨飾さんは毎日のようにうちに遊びにやってきた。学校ではとりまきが多いからあまり話せないんだけど…。俺はバイトがあるから、寮で暇そうな艶耀と話してるようだ。まぁ、艶耀との話はモデルとかファッションの話であるが。俺はいつまでも、自分の話はできないのだろうか?


「ただいまー」


「おかえりー優くん!クレアさん来てるよ!」


クレアさんって呼んでる艶耀というやつは、ねらってんのか?


「こんばんは!お邪魔しています。今度は高原くんのこと教えて下さい!」


えー、もう俺の話しさせてー。そんな話は夜中まで続いた。艶耀は聞いてるだけ。いや寝てる。というかクレアさん、日本語バリバリしゃべってるし。あの自己紹介なんだったんだ?

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