第3話

悲しいまま寮へ帰ったが、バイトの時間になり、すぐに外出。俺のやってるバイトはコンビニ店員。安い給料だけど、楽だからこのコンビニにいる。


「はぁ。もう、だめだ」


と、レジで宿題しながらついつい呟いていた。失恋…やっぱ辛い。


「なにが?頭悪すぎで?」


話しかけてくるのは、店長の福原安子ふくはらあこ


「てゆーか、仕事しろよな~?足助くん」


「やることはもう終わらせましたよ?」


「いや、まだだ!この賞味期限切れのプリンを食べてないじゃないかぁ~」


それは仕事ではない…店長は自分が好きなプリンを無駄に入荷しすぎて、いつも賞味期限切れになってしまう。バカ店長。


「プリンはもう嫌です」


「まあまあ、ただでやるって言ってるじゃないの~」


「結構です…」


「じゃ、持って帰ってね、10個」


「無理言わないで下さいよ」


「じゃ、ここ辞めるか~?」


…最悪な店長。でも他に都合のいい職場なんてなかなかない。


「しょうがないから持って帰ってあげますよ」


「さっすが!追加で10個あげよっか?」


「結構です」


そんなとき、お客様が店内に入ってきた。


「いらっしゃいませ」


笑顔で挨拶する。宿題とプリンを机からどける。…が、


「よ!あこ!」


「おーいるかじゃーん!」


なーんだ。彼女は、店長の友達の海豚いるかさん。大手チェーンのドーナツ屋店長である。よくこの店に遊びに来ている。


「さて、早く宿題終わらせないと」


と、また宿題を机に広げる。


「あれ?足助くん、なんか元気ないねー?」


いるかさんに顔を覗かれた。


「えーっと、いや、別に?」


「怪しい!なんか寂しげですけど?」


「寂しいなんて、いつものことですよ」


「あー!わかった!振られた?」


「な、なぜ!それを!」


「やったー当たり!」


「ど、どうしてわかったんですか?」


「え?普段宿題してないじゃーん?」


…そうか!テスト前しかしないか!


「いるか鋭い!確かにこいつ勉強全然しないんだよね~」


あこさん、なんかムカつくんですけど。


「余計な話はいいので、仕事して下さいよ。あこさん」


「足助くん、その言葉、そのまま返す」


「まぁ、いいじゃないのー。この店あんまり人来ないしさー?」


「いるか最悪!昼時とか来るしー」


「はいはい。いいから。ね、告白したの?」


「いや、告白以前に無理でした」


「あらまぁ、そーなの?可哀想」


「いるか、私は裏で仕事してるから、話しすぎないでよねー?」


「了解!でー足助くん!」


バイト先で失恋話が始まった。


「告白する前に振られちゃったってことよね?」


店長の友達のいるかさんと、レジで話す。普通の店なら、オバちゃんレベルだな。


「そうですね。彼女は、彼氏より劇団を選んだんです」


「え?劇団?」


「そうです。劇団です。部活的な?」


「それ!白うさぎじゃない?」


いるかさんが、バシっと机を叩いた。なんだよいきなり。


「はあ、たぶん?」


「それー私も入ってたのよ?そこはねー最高なのよ!」


「へぇ」


「そんだけ?興味持ってくれないの?」


「なんの情報もない」


「じゃー教えてあげる。演劇をするのよ!そーねぇ、サークルみたいなもん?年齢は小学生から大学生までいるのよ?」


「へぇー。なんかすごそう」


「すごかったのよ。でも今は人数減っちゃってさ~。その子入ってくれたら助かるなぁ」


「まぁ、俺は振られましたが」


「大丈夫よ。またかわいい子見つかるって!」


「まぁ、気になる子はクラスにいるんですよね…めっちゃかわいいんですけど、彼女その気全然ないんです」


「あーら、既に気になる子いるのに他の子に告白しようなんて考えたわけ?」


「ま、そんなもんです」


「軽っ」


そう、俺は軽い男。もう次の恋へ移行しよう。

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