第10話 カケルvsルイ

俺は決闘会場である訓練場に着いた。

訓練場には観客と思われる人達が大勢いて、とても活気立っている。


なぜこんなに人がいるのかというと、琉玖によれば、この決闘の噂がなぜか都中で広がってしまったのだそう。『神世代』のルイと、突如現れたサーラ団長の弟の俺との決闘でもあり、そこら中で賭け事も行われているそうだ。


こんな大事になっているんだ…。

ますます嫌な気持ちになる俺である。


俺は決闘場の訓練場の中央に向かう。

すると、俺を見た周りの人々がザワつく。

みんな口を揃えて「え、あの子がサーラ団長の弟のカケル?似てないね」と言っていた。


似てないのは弟じゃないから当たり前なんですけどね。けどなんで俺の顔までバレてるんだよ。だいたい外で稽古してたぞ?

しかも、だ。なぜか所々に隊服の人達もいて、お偉いさんぽい人もいる。


そうすると…


「やぁカケル。久しいね、今日は楽しませてくれよ?」


とルイが決闘場にやってきたのだ。

あの時以来なので1ヶ月ぶりである。


「あ…どうも、頑張りますー、、」


ルイが入ってきた瞬間、周りの観衆のざわつきが大きくなった。やはりこいつはそのぐらい有名なのだろう。


すると、続いてサーラさんがやってくる。

なぜか今回の審判はサーラさんがするそうで、今日の朝はなぜか上機嫌だった。


「観客の皆さんお待たせしました!今からみなさんお待ちかねの決闘を行います!では早速ですが選手紹介に入りましょうー!1人目は『神世代筆頭』のルイ=サルバート!!」


そう紹介され、ルイは余裕そうに観客に手を振っていた。女性ファンも多く、観客は大賑わいである。


「そしてそして、今回のチャレンジャーはー、私の弟であるカケル=ルミエール!!」


そう紹介されると、俺の想像以上に観客が盛り上がっていた。


「あの子が噂の??」


「おい勝てよー!!お前に賭けてるんだからな!」


という声も聞こえてきて、なぜか余計に負けられない状況に…。

ルイと同様に、俺もいちよう手を振っておいた。


そうしてサーラさんは続ける。

「さて、今回の決闘のルールとしては『一本先取』方式で、胴体に1回攻撃を与えたほうの勝ちとなります。そして━━━━━━」


と中央にアイリスも入ってくる。


「今回の決闘報酬として、ルイが勝ったならアイリスと結婚、負ければ永久的にアイリスに求婚できなくなります!」


そう言われ観客はザワつていた。



「カケル!絶対に勝ってよ!勝てなったら許さん!」


とアイリスからも言われる始末である。

なんでこんな目に…、とつくづく思うが、もう始まるからどうしようも無い…。


そうして、両者に木刀が配られ、いよいよ始まろうとしていた。


「では、ルイVSカケル、始め!!」


サーラさんの掛け声で、運命の決闘が始まったのだ。






俺たちは様子見で一定の距離を保っている。そっちから来ないんなら、こっちから仕掛けてみるか。


俺は『土ノ針ソイルスピナー』を展開させ、ルイに襲いかかる。

だけど、ルイはそれを冷静に避けた。


まぁ、こんな手じゃ通用しないよね…。

すると、攻撃を避けたルイが突然俺の間合いに入り込んできたのだ。


「っ!?」


俺は必死に木刀で防ぐ。

俺が『視認速度上昇』使っているのにも関わらず見えなかった。ルイが速すぎるのだ。


こんなに速いのかよ…。


俺は少し後退して木刀を構え直す。

そして、三本の『土ノ針ソイルスピナー』で攻撃するが、いとも簡単に避けて俺への間合いに入ってくるのだ。


今回は石壁を作り出して防御した、と思われたが…


「ふん、甘いな」


「っ!、なんで後ろに?!」


そう、既に俺の背後に回っていたのだ。

移動してるところ見えなかったんだけど…。


俺は必死に横に倒れ込み、立ち上がるもそこからはルイの猛攻撃で、反撃する機会がなく防戦一方になった。


あまりにも剣術で差がありすぎる。

あと実戦経験の差もあるのかもしれないし、まずまず『神素流転法』の質が違うのだ。

あまりにも速いし、俺の攻撃がすべて弾かれる。


今は何とか凌いでいるが、そろそろヤバい…。

このままではジリ貧だ…。

このままじゃ負ける。ならば…



俺は素早く後退して、『思考速度上昇』の効果をMAXにまであげる。そして、俺の周りに手の平サイズの小さな無数の石壁を周りに漂わせた。


「…?」とルイは一瞬戸惑っていたがすぐに俺の間合いに入ってきた。


そしてルイの剣が俺へと向かってくる。

が、「ガン!!」という鈍い音が響き渡ったのだ。ルイの剣が漂わせた石壁によって止められたのだ。


「っ!自動防御、か」


「その通りです」


そう、これは1ヶ月で開発した技である『自動防御システム』だ。

自分の周りに無数の石壁を空中に配置し、相手の攻撃が来たら自動で守ってくれる、というものだ。


まぁほぼ自動って言う方が合ってて、俺のスキルの『萌芽創成スプラウト』の権能は『物質操作』であり、物質に指向性を与えることもできるのだ。それを『思考速度上昇』を駆使してほぼ自動で守ってくれるようにした、という話である。


石壁も小さくすることで密度を大きくして、耐久性も上がっている。これが対ルイ用に編み出した『自動防御システム』なのだ。



よし、ようやくこれで攻勢に入れる。

俺はプラスに『土ノ針ソイルスピナー』も展開して、ルイと打ち合う。


さっきとは違って、ルイの方は対処に困っているようで防戦一方である。

けれど、さすがは『神世代』と言ったところで、時間が経つと対応してくる。


そしてルイの突きが俺の『自動防御システム』を潜り抜けて迫る、のだが俺は構わず攻める。

なぜなら━━━━━━━


「?!、なんでだ。何も無いのに剣が止まるんだ!」


ルイは俺の攻撃を辛うじて避けて、地面に倒れ込む。初めて土に手が触れたのだ。


「何をした?」


「いや、なにもしてないですよ?」


俺が何をしたかというと、俺の全身に空気の層、まぁいわゆる空気のバリアを作って纏っていたのだ。

これが、相手には視認できないバリア、『無ノ結界』である。相手が理解できないのが強いので、教える義理はないのだ。


こうして、俺は『自動防御システム』・『土ノ針ソイルスピナー』・『無ノ結界』による完全防御機構が完成したのだ。


ルイは理解不能な技により焦っているように見える。

そろそろ来るかもしれない、な。


「チッ、これを使わずとも楽に勝てると思ったのだがな…、だからスキルは嫌いなんだ」


そうルイが言うと、突然ルイの木刀が黄金に輝いたのだ。


これが『神素魔法』、か。






少し時は戻って、いつものようにアイリスとルークと稽古をしていた時だった。


「そういえば、ルイのやつの『神素魔法』の対策もしないといけないよね」


「『神素魔法』?」


「うん。神素力をエネルギーとして使う魔法のこと、まぁ魔力を使う『一般魔法』もあるけどね」


そう、この世界には『神素力』と『魔力』という二つのエネルギーがあるらしいのだ。

空気中、そして体内にあるのは大半が『神素力』なのだそうで、『魔力』を使うことはあまり無いらしい。


「ルイの神素魔法は正直強いですね」

とルークまで頷いていた。


「そんなにヤバい、?」


「まぁ、使われたら勝ち目はないですけど…ルイはプライドが高いのですぐには使わないと思いますよ」


「なんで、プライドが?」


「そりゃ、ルイからしたら、素人のカケルさんに本気を出すのは嫌だと思いますよ?」


んー少し癪に障るが、素人なのは本当なので何も言えない。


「なるほど、ならそれを出される前に勝たないといけないって事ね…」









「カケル、私にこれを使わせるぐらいには強いのは認めよう。だがこれで終わりだ」


剣の黄金の輝きが強まる。

多分、これは防御しきれないと思う。

いちよう木刀なんだけど、食らったら大ケガだぞこれ…。

だから、ここで終わらせる…!


そして、ルイが高く飛翔し、俺に向かってきた。


しかし…


「『無ノ牢獄エアプリズム』」


俺がそう唱えると、ルイは突然空中でのだ。

これがいわゆる『初見殺し技』である。


「動け、ない…!?」


それを見逃す俺ではなく、地面を強く蹴りルイに向かって飛翔する。


「ま、まて…!!」


「待てないです!こっちもアイリスからの脅しがあるので…」


と、俺の胸への一突きで決闘は終了したのだった。





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神にでもなってやる!! むぎ茶 @tyaaaaaa

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