第6話 スキルと新たな者たち②

突如俺たちの前に現れたのは俺と同じ歳ぐらいの金髪青年だった。

風貌もよく、金色の髪はサラサラとなびいていている。


その青年が現れるとアイリスさんはとっても嫌そうな顔をしていた。


「ルイ⋯来てたんだ」


「あぁ、もちろん。アイリスがいる所にはすぐに駆けつけるからな」


「キモイ」


まぁ⋯アイリスさんがこの人のこと苦手なことはすごく伝わってくるな。


「サーラさん、あの人って?」


「あの子はね、ルイ・サルバート。サーラと同い年の子だよ」


すると、俺とサーラさんが話していたのを聞いたのか、こちらへとやってきた。


「私は、アクリリウム・サルバート家のルイ=サルバート。『』の筆頭でございます。義姉様、今日も美しくございます」


「ありがとうだけど、義姉ではないよ?」

とサーラさんは突っ込んでいた。


「え、アイリスさん、そいつと結婚してたの?」


「してないよ!!」

と言われ、ついでに頭も叩かれた。

なかなかに痛い。ネタなのに⋯。


すると、金髪━━━ルイは俺の方をみていた。


「ん?お前は誰だ?なぜアイリスたちといる?」


俺は突然問われて戸惑っていると


「あぁ!そうそう。この子はね、今日来てもらった私の弟だよ!」


とサーラさんが代わりに答えてくれた。


「は?はぁ?!弟?」


ルイの方は初耳情報にめちゃくちゃ驚いている。まぁ、急に弟がいたって知ったら驚くか。


「は、はじめまして。カケル=ルミエールといいます。どうぞお見知り置きを⋯」


俺は挨拶をすると、ルイが俺の前に立つ。


「お前がサーラさんの弟?で、アイリスの?」


「え、あ、兄です」


と、元々兄だったので勝手に兄と答えてしまった。ちらっとアイリスさんの方を見ると状況に追いつけていない様子だった。


まずまず兄弟設定の話していないよね、うん。


「兄?というか、まずまず本当に兄弟なのか?あまりにも似てないじゃないか」


ご最もです!

それを言われるのは仕方がない。

さてどうしたものか⋯。


「本当ですって」


「本当なのか?」


「本当です!」


「⋯そうか」


あれ、案外すんなり受け止めてくれたのか?と思った矢先だった。


「カキンッ!!」

と俺の前で剣が交わる。

そう、ルイが斬りかかってきてたのだ。

が、サーラさんがルイの剣を受け止めてくれていた。


え?この状況になっているのが理解できないんですけど⋯。


そう、俺にはルイが剣を抜いたのが見えなかった。そして助けてくれたサーラさんの動きも全く見えていなかった。


突然、この状況になっていたのだ。


「ルイ君、それはダメだよ」

とサーラさんは真面目な声で言う。

口調は優しいままだが、その言葉には怒りの感情が含まれていた。


初めてサーラさんの真面目なところを見て、俺はさっきまでとのギャッブに驚く。


これが、『団長』の風格か。


ルイは剣をしまい、続ける。

「失礼しました。もちろん本当に殺す気は無かったですよ。ただ、そいつは反応できていなかった」


「なにが言いたいの?」

とサーラさんが問う。


「弱い。ルミエール家のものでは無い。俺は認めませんよ。⋯いや、違う。私は━━━━━」


え、違う?


「私は、こんな弱いやつがなのが許せない!!」


あ、そこなんだ、許せないところ⋯。

あと結婚前提なのね。


サーラさんの顔を見ると、理解不能って感じで、人間を見る目をしていなかった。


その時だった。


「ならルイ、勝負をしない?」

とアイリスさんが言い出したのだ。


「勝負?」


「うん。ルイとカケルの1VS1の決闘をしてルイが勝ったら、カケルが私たちの兄じゃないことでいいよ。ただし、ルイが負けた場合、カケルを兄と認めて私との結婚を諦めることね」


えっと⋯、なんで俺が巻き込まれて⋯。


「なるほど⋯だがそれでは私が勝った時の得が少ないでは無いか」


「ち、気づいてたか⋯」

とアイリスさんは舌打ちをする。

この人、自分には損害がない条件かつ、しれっとルイが結婚を諦めるように仕向けたな。


するとここで


「ならカケルが負けたらアイリスと結婚ってことでいいじゃない?」

と、サーラさんが爆弾発言をしたのだ。


「「はぁ?!」」

俺とアイリスさんは叫ぶ。


「ちょっとまってお姉ちゃん!それはやばいよ!」


「そうですよ!俺まで巻き込んで━━━━」



しかし、その声は残念ながら届かなかった。


「いいでしょう!!その条件、受け入れました」

とルイが了承してしまったのだ。


「なら、今日から1ヶ月後ここで決闘でいい

?」


「1ヶ月後?なんでそんなに期間が長いのです?」


「そりゃ、今戦ってもカケルが勝てるわけないでしょー?というか、もしかして怖いの?1ヶ月後もあったら負けるって??」


サーラさんが煽りに煽る。


「⋯!、そ、そうですね。私に1ヶ月程度、なんの問題もありませんよ」


「そう?なら決まりだね」


と俺とルイの決闘が確約されてしまったのだ。

なんで俺がアイツと戦う羽目に⋯。


するとルイは俺を見て「決闘楽しみにしてるよ」と告げて、訓練場から出ていったのだった。



「よーし!じゃ、2人とも頑張ろっか!」


「「頑張ろっか!、じゃない!!」」

と俺とアイリスさんのツッコミが入る。


「えぇ⋯。でも勝てばアイリスも結婚しなくていいって言うメリットあるじゃん」


「負けたらどうすんの?!」


「まぁ、それは結婚してもらって⋯」

と2人で言い争っていた。


「えっと、俺の責任重くないです、か?勝たないといけないんですか?」


「まぁ、負けたらアイリスが結婚するだけかな?」


するとアイリスさんはしゃがみこんで「終わった⋯」と呟いていた。


その時だった。


「えっと⋯、ルイがまた変なことしまし、た?」

と、俺たちの前にまたもや同い年ぐらいの青年がいたのだ。

しかし、今回は金髪では無い。黒髪であり、顔立ちも、見た目もだったのだ。


え、日本人なのか、?


「あ⋯ルークも来てたんだ⋯」


「え、アイリスどうしたの、大丈夫?」


「大丈夫じゃないよ!私の人生終わったかも⋯」


と言われ、その人は現状理解が追いついていない様子だったので、サーラさんが今までの経緯を話した。


「なるほど⋯、それは災難で⋯。というか、さっきから思ってたんですけど、その方は?」


そう言われたので、「自分はカケル=ルミエールです」と名乗り、兄弟だということを話した。


もちろん、めっちゃ驚いていて、こちらも半信半疑と言ったところだった。


「へぇ⋯まさかアイリスにお兄さんがいたなんて⋯。あ!、遅れましたけど、僕の名前はルークです。よろしくお願いします」


「ルークね、よろしく」と俺たちは拍手した。

俺はもう1度顔を見る。

やはり何度見たって日本人だった。

けれど、名前は日本人ぽくなく、やはりこの世界の人なのかもしれない。





挨拶が終わり、アイリスさんの方も落ち着いていた。


「お兄さんとルイとの決闘ですか⋯、なかなか厳しいと思います」


「やっぱり、?」

と俺が聞くと、ルークはルイについて話してくれた。


まず、ルイは『神世代』と呼ばれるものたちの1人らしい。


確かに、自分で「神世代の筆頭」とか言ってたっけ?


その『神世代』というのは、この国にはサーラさんが団長をしている『海翠水神騎士団ワーテルナイト』と呼ばれる騎士団があるらしい。


また、その騎士団に入るための試験が1年に1度あるらしく、その年の試験希望者の中で他と飛びんでて優秀な人達がそう呼ばれているそう。


その筆頭のルイに勝たないといけない事のやばさも感じたが、1番驚いたのは、アイリスさんもルークって人も『神世代』の内の1人という事だ。


えっと、もしかして俺ってやばい家に居候してる?と思ったがそこで考えるのは辞めといた。



そして、ルークがいうには、勝てる確率はゼロではないらしい。



「まぁ⋯決闘のルール的には勝つ方法もあると思います」


「ルール?」


「はい。この国の決闘のルールとして、『胴体に1回攻撃が当たれば勝ち』というのが定番なんですよ」


「なるほど?なら殺し合いではないから俺でもワンチャン勝てるかもってこと?」


「そういうことです」


あー、ワンチャンあるのか⋯。

逆にない方が気が楽だった気がするような。


すると

「よし、カケル!やるなら勝つよ!てか勝たなかったら許さないから」


と、さっきまで不貞腐れて黙っていたアイリスが急に立ち上がったのだ。


「えぇ⋯」


「うんうん。勝てばいい話しよ」

とサーラさんも乗ってきたが


「お姉ちゃんは黙って」


というアイリスさんの言葉で打ち消された。

サーラさんは、「昔はもっと可愛かったのに⋯」と拗ねていた。


似てんな⋯この2人。と思った俺である。




こうして話はまとまり、いつの間にか夕方となっていたので、今日はもう家に帰ることに。


そうして俺は帰ろうとしていたところ、なぜかルークに呼ばれたのだ。


「?、何か用でもあった?」


「いや、用でもないんですが、。また今度、お兄さんと二人だけでお話したいです!それではまた!」


とそれだけ言って帰ってしまった。

まさか、ほんとに日本人だったりして、?

ま、まぁ、今考えても仕方がないか。

また今度分かるだろう。


そうして俺たちは帰路に着いたのだった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る