第3話 入国審査
俺たちは「アクア」に入るために門へと向かうことに。
今いる丘は、これ以上前に行くと崖になっている。この崖を下った先に門が見えるのだが迂回するのかな?と思ってると、サーラさんは崖の方へと歩いた。
もちろんそこは崖で行けるはずがない。
「そっちは崖ですよ?」
すると、サーラさんは当然のような様子でうなづき
「ここから降りた方が早くない?一直線だし」
というのだ。
ちょっと待ってください?
この人、いやサーラさん。この崖を降りようとしてる?なかなかの高さだけど⋯。
多分40~50mはあると思う。
「さすがに危なくないですか、?」
「あ、そっか、確かに。普通の人には危ないか。私は昔からよくここから飛び降りて遊んでたからついつい」
サーラさんは笑っていたが、笑い事じゃないです。
普通に死ぬよな、、これ。
案外この人抜けているのか?と考えていたら、
突然サーラさんが俺を持ち上げたのだ。
「へ?」と俺は突然の事に呆然とする。
どんな状況か?
それは、俺がサーラさんにお姫様抱っこされているのだ。何これ。
周りからすれば、美人のお姉さんが男子高校生をお姫様抱っこしている感じ。
幸いここには人はいないから良かったけども⋯ね?
「えっとこれは⋯?」
「これならカケル君を安全に運べるかなって」
「それはちょっと話が違うな━━━━━」
サーラさんは俺の言葉を最後まで聞かず
「行くよー!」と言って走り出してしまった。
「ちょちょっと待ってください!!まだ心の準備が━━━」
時すでに遅し。
俺の言葉も虚しく、空へ舞う。
なにか既視感があると思ったら、そういやビルから落ちた時もこんな感じだったかな、と俺は思ったよりも冷静だった。
その理由は、サーラさんの柔らかい腕、そして豊満な素晴らしい聖なるブツに包まれているからだ。
不可抗力であり、致し方ない。
これもありか━━━、と内心喜んでいたことは黙っていよう。
サーラさんは崖に出っぱっている岩に飛び移りながらひょいひょいと下っていく。
そしてあっという間に地上に着いたのだった。
サーラさんが俺を降ろす。
もう少しあのままでいたかった、など当然言えないので、異世界2回目となる脳内永久保存をした。
そして俺たちは都へ入るための門に向かう。
上から見た時もデカいと思ったが、地上から見るとよりその大きさが際立って見えた。
都は城壁によって囲われていて、侵入することは難しそう。
あの巨人が出てくる某漫画程の大きさでは無いけど、大きいのには変わりない。
そして俺たち2人は門の関所についたのだった。
門の前には門番と見られる2人の男性が、都に入ろうとする人たちを検問していた。
そのためか結構長めの検問待ちの列が出来ていた。
俺たちもそれにならって最後尾に並ぶ。
俺は並んでいる人たちを観察すると、商人や冒険者と思われる人が多く、The異世界という感じだ。
ホントにいるんだ、と少し嬉しい気持ちである。
すると、サーラさんが小声で俺の耳元に話してきた。
「(この検問なんだけど、身分証がないと入れないの忘れてて...)」
急に耳元に話しかけられ俺はピクっと反応してしまった。
そりゃ⋯、声も可愛いの反則だよね⋯。
反応しない方がおかしい。
だけど、サーラさんは気づいていない様子なので、何も無かったかのように俺は小声で返す。
「(え、じゃあ俺入れないってことですか?)」
「(んー、異世界人って言ったら納得してくれるかな?)」
「(絶対無理です)」
「(だよね)」
やっぱこの人なにか抜けてるな。
てかそんなこと考えてる暇じゃない、俺たちの順番が着々と近づいてるのだ。
「(どうするんですか!?順番来ちゃいますよ!)」
「(どうって言われても...あ!分かった!カケル君を私の弟設定にしよう!私こう見えても結構有名な方だからあとは任せて!)」
は?弟設定?有名?どうゆうことかなのか理解出来なかったが次で順番がくる。
「(え、弟設定ですか??)」
「(うん。もうそれしかない。カケル君は全力で弟の演技してね!)」
「(はい⋯わかりました)」
まぁ、もう順番が来るのでその案しかない。
そして、順番が来た。
「止まれ、身分証明書を━━」と高圧的に門番の男が言いかけたところ
「あ、失礼しました!お疲れさまです!サーラ第三騎士団長!」
と態度を急変させたのである。
ん?第三騎士団長?
これがサーラさんが言ってた有名ってこと?
「そんな畏まらなくていいよ。門番だからその態度になるのは仕方ないしね」
「いえいえ、私としたことが確認もせず、団長に失礼な態度を取ってしまい申し訳ありません...。あ、そういえば、あの任務の方は終わったのですか?」
「うん。やっぱり『
「やはりでしたか、。何はともあれ、とりあえず任務お疲れさまです。で、ところで━━━」
と俺の方を見る。ついに俺に来たか。
と俺が挨拶しようとすると、先にサーラさんが説明をし始めた。
「あぁ!この子は私の弟のカケル=ルミエール
です!」
「えーっと⋯こんにちは。私はカケル=ルミエール?と申します。私の姉がいつもお世話になっております」
名前が安直で戸惑って疑問形になってしまった。
「なんで疑問形?」という呟きが聞こえたがヤバいかな?
「えーと⋯サーラ団長には妹さんしか居なかったですよね?」
「いや?地元に残ってた弟が今日ようやく来てくれたの。みんなには言ってなかったから知らないのは当然だよ」
「そう、なんですか⋯」
と門番の男性は不満そうに俺を見つめる。
「肌とか髪の色全然違うけど⋯」とブツブツ言っているがその通りである。
髪の色は、俺黒色でサーラさんオレンジ色だし、肌の色も俺がバリバリ日本人なのに対し、サーラさんはゴリゴリの白人だし。
すると、不利を察してか、サーラさんが強硬にでた。
「本当に弟だよ?!第・三・団・長の私が嘘をついてるって言いたいの?!」
「いやいや、そういうわけでは⋯」
完全に職権乱用である。ほぼ脅しだね。
サーラさんは多分この門番の上司の立場なんだろうけど⋯、前の世界ならパワハラになりそう。
門番の男性は頭を抱えて少し黙った後、ため息をつき、「分かりましたよ!あとで弟さんの身分証明書作ってくださいね⋯」と半分諦めな様子で了承したのだった。
「分かってるよ。ありがとう〜」
サーラさんはそう言って、少し意地悪な笑顔で手を振って門に入っていった。
俺もそれに続いて入っていったのだった。
そうして、俺たちは無事に都へと入ることができた。
明らか強引だったけど⋯。
そんなの気にしたら負けかな。
それはともかく。
門をくぐるとそこはとても美しい街並みだった。
様々なオシャレなお店があり、人でとても賑わっている。
外からは見えなかったが、所々に水路があって、流れる水が太陽に照らされキラキラと光って、そのおかげか街全体が光っているように感じた。
更に奥には大きな白い噴水が見える。
サーラさんと俺はそこの噴水まで歩いていった。
「良かった良かった、うまく入れて」
「結構強引な気が⋯」
と率直に言ったが
「それはきっと気のせいだよ」
と軽くあしらわれてしまった。
「よし、色々と観光したい気持ちはあると思うけど、先に私の家に行ってもいい?まず妹を説得しないといけないから」
「はい、全然大丈夫です」
サーラさんは「いえいえ〜」といい、家のある所まで案内してくれた。
サーラさんによると、家は都の中心から離れていて、宮殿の近くの住宅街にあるらしい。
そうして、俺たちは15分ぐらい歩いてようやくサーラさんの家に着いた。
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