欧州大戦終結の講和条約

 4月18日、ドイツと連合国側での休戦条約が締結され、戦争行動は終結した。


 ちなみに臨時政府からロシア共和国に移行していたロシアでは連合国に所属していたが、ドイツとは白紙講和となり、戦前の国境で落ち着いていた。


 現在連合軍は南ドイツを占領しているため講和会議もミュンヘンというドイツの都市で行われ、イギリス、ベルギー、フランスの3国がドイツに色々と要望した。


 まず領土割譲の問題はイギリスとベルギーがアフリカの大半の領土をむしり取り、アジアは日本とイギリス、フランスで分割。


 本土もアルザス・ロレーヌ地方をフランスに割譲してもらった。


 また軍の制限を行い、ドイツ軍は10万人までかつ戦車や航空機の開発、生産を禁止した上で海軍にも大幅な制限を設けられた。


 そして賠償金であるが最初はドイツ国家予算十数年分という莫大な金額(それでも史実よりはマシ)で決まったが、艦船の譲渡や保有する技術の譲渡で減額という運びになり、それでも返済に10年以上かかる金額となった。


 一番賠償金に熱を入れていたのが本土の大半を占領されていたベルギーであり、国土が焦土となっているのでドイツから賠償金を多く取らなければ国家が破綻してしまうのだ。


 まぁベルギーにはフランスが復興資金の援助を約束して講和が破談になるのは避けたが、ドイツは大敗し、再度軍事行動を起こす余裕を失っていたためにどんな屈辱的な条約でも飲み込むしかなかった。


 で、一番焦点を当てられたのがドイツ皇帝の戦争責任である。


 過去の事例だとフランスのナポレオン三世の様に戦争にて捕まり、敗北の責任を取って帝政が瓦解した事例があるため、ドイツ皇帝の退位について真剣に話し合われた。


 フランス的にはワイマール共和国からのナチス政権ができるよりは帝位を皇太子に譲り、ドイツ帝国が存続したほうが良いと考えていたが、ドイツ側は連合国がドイツ皇帝の戦争責任について話し合われているという話をベルリンの政府に連絡するとドイツ皇族は戦争責任を取らされるくらないならと亡命を選択。


 オランダへと皇室の財産を持って逃げてしまい、ドイツは急遽共和制へと移行することとなり、ドイツ政府は混乱してしまい、講和条約への口出しが一切できなくなってしまう。


 そこでイギリスが口八丁で講和会議をまとめ上げ、7月29日に講和条約が締結。


 ドイツの敗北がこれにて決定となった。







 二重帝国は戦争によりバラバラに分裂し、セルビアを中心としたユーゴスラビア王国が誕生。


 しかし史実と違い未回収のイタリアと呼ばれていた地域をイタリアが回収し、イタリアは戦争目標を達成したが、ユーゴスラビア王国との領土問題を抱えることになる。


 二重帝国としての戦争責任は分離して誕生したオーストリアとハンガリーに追及され、賠償金と軍事に制限を受けることとなる。


 最後に残ったオスマン帝国は最後まで抵抗したが、ドイツが戦争を終結したことで講和に応じ、国土は空調分解し、オスマン帝国の名前は地図から消え、後継国家としてトルコ共和国が誕生することとなる。


 トルコには中東地域の安定化の為にある程度の国力が必要と考えたフランスはトルコ軍に旧式の兵器を売りさばき、戦争が終結して直ぐに始まったギリシャとの戦争でトルコはイスタンブールまでの領土を奪還し、フランスとイギリスが占領していたトルコの中核州を返還し、現代で見慣れたトルコの形になっていくことになる。








「ほほう、流石ドイツ帝国。なかなか良い艦船が揃ってるじゃねぇか」


「愛しのザイドリッツ巡洋戦艦を手に入れられたからな! こいつを魔改造していくぞ!」


 フランスはドイツ海軍から賠償金を天引きする代わりに将来性のありそうな艦や植民地警護で使えそうな航続距離が長い軍艦を多数入手していた。


 その中には大型艦がいくつかあり、イギリスと競り合う為に軍艦を建造していたドイツの軍艦の技術を取り込めるとフランス海軍関係者は喜んだ。


 どうしても陸軍に予算が割かれがちかつ、大戦になるかもしれないと予算がなかなか降りずに苦労をしていた分、ドイツ海軍の軍艦が手に入り、かつ海軍予算が植民地警護の海域が増えた事で増額になるため喜んでいた。


「ドイツ海軍から戦艦1隻、巡洋戦艦2隻、重巡5隻、軽巡6隻、駆逐艦15隻、潜水艦20隻……1個艦隊作れる分だけぶんどりましたからね」


「ゲヒヒヒ、近代化改修が必要とはいえ、新造艦を造るより船体を流用できる。これで20年は船を使いつぶすことができるし、軍縮条約などでもカードになる!」


 もちろん海軍だけでなくドイツ軍は航空機や戦車も賠償品として差し出されていたが、カイザー戦車の出来にフランス陸軍は肝を冷やしていた。


「小型パンターを第一次世界大戦で作ってくるとは……」


「装甲技術や足回り、砲の技術等学ぶべきところは多い……ドイツ軍は既に350馬力に到達していたのも大きい」


「この技術を学び、新型戦車に活かさなければ」


 講和条約の成立により転生者達は第一次世界大戦と呼んだが、欧州大戦と皆が呼ぶ戦争は終わりを迎えたのだった。


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