ジョフル将軍解任!
ライオン作戦が実行された頃にはルークマーク4やシュナイダーマーク2が前線部隊に行き渡り始め、ベレー曹長達にも新型のシュナイダーマーク2が運び込まれていた。
シュナイダーマーク1に比べてエンジンが強力になったことで装甲厚も少し分厚くなり、側面も12mm、前面も20mmとなったことで機関銃から抜かれる心配はだいぶ減ることになった。
更にベレー曹長の第120号車には側面に5mmのシュルツェン(追加装甲)が付けられており、対戦車ライフルを使われた場合でも前面と側面からは抜けないし、榴弾も側面の追加装甲が空間装甲の代わりにもなっており、1撃だけなら7.5cm砲なら耐えられる用に作られていた。
それでいて時速は70キロでる快速戦車である。
また細かな改造としてシュナイダーマーク2には機関銃が砲塔に追加されており、対歩兵能力が上がっていた。
「よぉベレー曹長、新型はご機嫌かい?」
「ええ、じゃじゃ馬ですが良い戦車ですよ分隊長」
一度後方に下げられ病院にて傷を癒していたが、復帰し、分隊長の部隊へと戻っていた。
「分隊長の方もシュナイダーマーク2も改造型ですか」
「あぁ、ただドイツ軍も新型戦車を開発していると聞く。そのうち既存の50mm砲でも効かなくなるかもしれないからな」
「となると長砲身型が出るかもしれませんね。まぁモンスターを作ることに定評のあるドイツでも第一次世界大戦でティーガー戦車は作らないでしょうし」
「そうだと思うが……第一次世界大戦でⅢ号戦車を作ってきたドイツのことだからな……」
史実ドイツの戦車開発能力と現在のドイツ帝国の戦車開発能力を考えると作らないという事はいえなかった。
「とりあえず訓練をもう数週間したら実戦に復帰だ。場所はまた北部に戻ってベルギー方面だ」
「またですか……まぁ良いっすけど」
「ロシアやエジプトに送られるよりは良いだろ。ロシアの戦車開発を支援するためにうちの中隊からも何人か引き抜かれて送られてるからな」
「そりゃ勘弁ですわ」
ベレー曹長はヘルメットを被り直し、再び戦車に乗り込んで戦車指揮を始めるのだった。
戦車の他にも兵器開発は進み、塹壕戦で弾丸をばら撒く事が出来る自動小銃が必要と判断され、ソ連のAK47を参考とした小銃が急遽作られた。
元のAK47が異次元の頑丈性ととにかく動作不良を起こさない事に定評があったため、殆どコピーとも言える自作銃は泥が詰まろうが、海水に濡れようが問題なく弾丸を発射することができ、多少のパーツの不良があろうが動作するために量産許可が直ぐにおり、量産が開始された。
ただマガジンは弾丸を少しでも多くバラ撒けるようにとドラムマガジンも開発され、通常の30発マガジンと100発入るドラムマガジンの2種類が用意された。
新型自動小銃はFA(Fusil d' Assaut)とサン=テティエンヌ造兵廠で作られたということでサン=テティエンヌ造兵廠がMASと言われていた為にファマスと呼ばれることとなる。
ファマス自動小銃は直ぐにフランス陸軍に納入され、実戦に投入されることとなる。
着実に転生者達の力で適切な兵器を次々に開発されていくが、戦争の長期化の影響が国内経済でも着実に起こりつつあった。
まず原料を含めて対米輸入が大幅に増えた。
民需品を作る余裕がなくなっていたので民需品をアメリカに頼るのは必然だったが、将来アメリカが米帝へと進化することを考えるとなるべくアメリカへの依存は減らさなければならないがなかなか難しかった。
フランス政界は戦争の早期終結についてまだ理性的に議論されており、講和についての歩み寄りが行われていたが、ドイツ帝国はそれを蹴ってまだ勝ち目があると考えていた。
出血作戦を再開すればフランスは必ず屈服すると考えられていたが、フランス含めた連合軍は春に全方位にて攻撃を行い、ドイツ帝国と二重帝国を屈服させる春風作戦が立案されておりその準備を着々と進めていた。
またイタリアは中立国でいたほうがフランス的には国益になると考えていたが、二重帝国の戦線を増やした方が圧力になると考えたイギリスがイタリアを得意の外交で引き込み、春風作戦前に参戦する事を取り付けた。
そしてフランス軍の改革も進み、ジョフルを総司令官から引き下ろす事に成功する。
ジョフルは元帥に昇進させてモロッコ司令に左遷、ジョフルを中枢から外した事でジョフルの腰巾着だった参謀や将校達も植民地へ左遷させ、第6軍司令官だったフォッシュ中将を総司令官に就任させて、幻想会派閥の将校でフランス陸軍を掌握。
戦時下の場合、派閥争いで軍が混乱するのは言語道断であるが、無能に戦争指揮をさせ続けるほうが問題であった。
参謀本部は平均年齢が10歳近く若返り、戦車や機械化に理解がある将校が上に立てるようになり、春風作戦にて大規模な機動戦術を実行出来る指揮系統の確立を急いだ。
ウェルダン方面軍として管轄していたペタン少将は中将に昇進の上で第6軍司令官に就任し、フランス1の猛将と言われるデスパレ中将が第5軍司令官、左遷されていた改革派と呼ばれていたカステルノー中将を第3軍司令官とプラン17で不等に責任を取らされていたランレザック少将を第2軍司令官に戻し、指揮系統を1本化することに成功する。
更に優秀な指揮官を次々に昇進させて幻想会派閥の権力強化を実行し、要職に次々に就けていった。
これでもし戦争指揮で大敗するようなことがあれば幻想会派閥が全ての責任を取らされるが今後20年の派閥の優位性を確立させるために強権を振るって軍権を強化し、政治家達もその動きを支援した。
そしてフランス軍は春風作戦の為に研究されていた縦深戦術理論の実行を行うための戦力備蓄に取り掛かるのであった。
そして冬になると雪や寒さにより戦線はまったく動かなくなり、冬の停戦と呼ばれる状態となる。
しかしドイツ国内ではカブラの冬と呼ばれる不作が始まっており、農耕馬をドイツ軍が徴用したり、農民の人手不足により十分に農地を維持することができなくなり、作物の収穫量が激減。
輸入したくとも海上封鎖で食糧が入らない状況となっており、飢餓が始まろうとしていた。
食糧不足とは無縁なフランスでは確かに農民が兵士に取られたり肥料工場が火薬を作るために生産ラインが変えられてたりして生産量は落ちていたが、広大な植民地とアメリカからの輸入が受けられるので配給制になりながらも飢える事はなかった。
そんなフランスのパリにて幻想会幹部が集まり海軍の軽空母の進水のお祝いをしていた。
「いやぁこれでイギリスに並びましたな」
「まだ軽空母。搭載機数も20機と少ないが、今後のフランス海軍の事を考えると良い傾向でしょう」
「フランスは植民地が広大だからな。イギリスまでとはいかないが2個艦隊くらいは保有して置かなければ」
「フランス版連合艦隊ですかな?」
「ドイツが今回の戦争で敗北すれば仮想的はアメリカとイギリス、イタリアの海軍強国になりますかな」
「まぁファシストに染まるイタリアが明確な仮想的でしょうな。そのイタリアを倒すには正規空母を4隻と零戦並の艦載機、あと酸素魚雷も欲しい」
「海軍さんは欲張りですなあ」
「仕方ないだろ。場合によっては日本との戦争も将来的にはあり得るんだ。ベトナムを守るためにはそれくらいの戦力は必須だ」
「まぁヨーロッパの海軍バランスを考えても正規空母は保有しておきたいですな」
「どうせ海軍軍縮条約で保有艦量が制限されるんだ。質で勝負するしか無いからな」
「質ですか……陸軍や空軍もドイツを圧倒できる質を得ていたいものですなぁ」
「マジノ線を作らなければ軍事予算は足りるだろ。あの史実では無用の長物となったマジノ線の予算を研究費に充てていればフランスもドイツに遅れを取ることはなかっただろうに」
「今のまま研究が進めば早期に真空管の計算機を開発できた影響で1930年代にはトランジスタコンピューターの開発もできそうです。そうすれば兵器研究も艦船の制御も対空兵器の性能も全て上がるはずですから」
「その為には今回の戦争に何としてでも勝たなければ」
「軍事予算を大幅に投資してもらったおかげで航空機用500馬力エンジンについても目処が立ちました。春風作戦には間に合いませんが、早ければ3月、遅くとも6月までには諸問題を解決し、生産できるようになるでしょう」
「春風作戦が失敗した場合幻想会の政治的権力が揺らぐことになる。必ず成功させて戦後のフランスを導かなければ」
その場にいた転生者達は皆頷くのであった。
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