ルーベー攻勢とウェルダン戦車戦!
ベレー軍曹改めベレー曹長達第369号車の面々はザンブル河の戦いでも生き残り、更に6両ドイツの戦車を撃破し、スコアを11に伸ばしていた。
5両撃破の戦車エースになったことで搭乗員は全員1階級上がっていた。
「攻勢ですか」
中尉になった分隊長から作戦について話される。
「目標はルーベーの町を突破してベルギーの鉄道の要所であるコルトレイクの奪還だ」
「あの町は2カ月前の撤退で鉄道網は破壊して撤退したのでは?」
「航空偵察により鉄道が復旧し、前線に物資と人員を運ぶ列車が運行をしているのを確認した。ルーベーからコルトレイクまでは距離にして30キロだ。ここを突破することが出来ればウェルダン要塞に投入されている敵戦力を分散させることが出来る」
「つまりは陽動ですか」
「ジョフルの馬鹿が幻想会の忠告を無視してプラン17を始めた挙句、敵の失血作戦にまんまとハマったのがいけない」
「流石に最高司令官を馬鹿呼ばわりは不味いのでは?」
「俺とお前(ベレー曹長)しか居ないんだから良いんだよ……俺達に求められていることは遊撃だ。また正面はルークマーク3の部隊が請け負ってくれるらしい。側背面から一撃を与えるいつものやつだ」
「了解です。分隊長もあと1両でエースですから頑張りましょう!」
「おう! 戦車エースとして将来の功労年金増額とボーナスをゲットしてやるぜ」
第6軍司令官フォッシュ中将は第6軍に攻勢開始の命令を送り、ルーベーの戦いが始まった。
短時間の砲撃の後に先陣を切るのは戦車部隊であり、随伴歩兵を伴いルークマーク3の車列が鉄条網を踏み潰して敵陣地に突撃していく。
ドイツ軍は対戦車砲はあるものの装甲の厚いルークマーク3には貫通力不足であり、頻繁に跳弾が発生し、有効打にならない。
そうなると大型の砲による砲撃か航空攻撃による撃破が求められるが時速45キロ出るルークマーク3の速度により砲弾はなかなか当たらず、航空機はフランス空軍とイギリス航空隊が航空機全力投入していた為に地上支援する余裕がない。
頼みの戦車も前の大損害で稼働できる戦車がウェルダンに送られていた為にドイツ北方軍は戦車を大規模運用できるだけの力が失われていた。
塹壕を突破したフランス第一機甲師団は傷口を広げる為に部隊を散開。
敵陣地の砲兵部隊を攻撃し無力化したり、敵前線航空基地に浸透し、倉庫にあるドイツの航空機を鹵獲したりとやりたい放題であった。
戦車部隊に随伴する歩兵達も戦場で機敏に動けるようにと3人乗りのケッテンクラート擬きをPM社が開発しており、それに乗って敵前線を突破していった。
ベレー曹長率いる第369号車の面々も遊撃部隊として敵陣地に浸透し、戦車に出会わなかったものの、ドイツの砲兵陣地と馬20頭、2個小隊を捕虜にすることに成功し、ルーベーの町のドイツ軍の陣地を突破するのに尽力した。
今回の作戦成功の鍵は短期間の砲撃もある。
通常攻撃する時には1日近くの砲撃を行うのだが、フランス軍は1時間という短時間の砲撃かつ砲撃の最中には部隊の前進を開始しており、それが奇襲効果を生み出した。
砲撃による防御している最中に攻撃を受けた為にドイツ軍の前線部隊は碌な抵抗をすること無く捕虜となってしまう。
更に戦車や機械化歩兵(自動車や原付、ケッテンクラート擬きに乗った歩兵)による機動力に優れる攻撃により前線部隊が降伏したことが前線司令部に到達する前にフランス軍が前線司令部に到達し、司令部を無力化してしまう。
司令部という頭を失った前線部隊は逃げることもできなくなり、時間差で襲いかかってきたフランス歩兵部隊により無力化されていった。
ルーベーの戦いでのドイツ軍の被害は5万人にも及び4万人が捕虜となったが、それ以上に野戦砲250門、航空機100機、機関銃1000丁が鹵獲された事の方が問題であり、ドイツ軍の3重の防衛陣地が突破されたというのドイツ軍上層部を恐慌状態にするには十分であった。
プラン17でフランス軍は1キロの前進するために1万人近くを消費していたのに、今回のルーベー攻勢ではフランス軍の死傷者は約1000名で収まっており、防御陣地を抜かれたドイツ軍はコルトレイク近郊まで戦線を押し込まれる事となる。
フランス軍が1日で25キロの前進に成功し、軍事的大勝と宣伝。
ドイツ軍は今回の敗戦を受けて防御陣地の再構築と対浸透戦術の対抗手段を模索することとなり、更にウェルダン攻勢に温存していた予備兵力を前線となったコルトレイクに送り込む必要が出てきた為、ウェルダン攻勢を一時中断。
フランス軍が目論んでいたドイツ軍の兵力の分散を達成することとなる。
この作戦が有効と判断したフランス軍は第一機甲師団をウェルダン方面に転進させ、第二のルーベーを狙う。
第一機甲師団だけでなく新設された第二機甲師団を踏まえた戦闘車両2000両による攻撃を開始するが、ドイツ軍は浸透強襲対策に3重の防御陣地の兵力比率を変更し、今までは前から4:3:3という兵力配置を1:5:4に変更し、奇襲効果を最初の塹壕で使い切る作戦に打って出た。
更にドイツはオーベルシュレージエン突撃戦車ではフランス軍の戦車の装甲を打ち破るのに苦戦するとして5cm長砲身砲を搭載し、砲塔を動かないように固定することで早期の改造を可能にし、オーベルシュレージエン駆逐戦車を少数投入していた。
対戦車砲も3.7cm砲から5cm砲への換装が進み、ルーベーの再現にはならず、フランス軍は400両もの車両を失う大損害を受け、浸透強襲の効果も薄く、両軍4000両近くの戦闘車両が入り混じる戦車戦が発生。
ルークマーク3のバランスの良さとシュナイダーマーク1の機動力の良さ、フランス軍は全車両が50mm砲を搭載していたことが勝敗を分け、ウェルダン戦車戦には勝利する。
しかしベレー曹長率いる第369号車も大破してしまい、相棒であった第369号車を乗員脱出後に鹵獲されないように爆破して涙の別れを送ったり、脱出の最中に負傷して乗員全員後方にて治療を受ける羽目になるのだった。
ただウェルダン戦車戦はフランス軍もウェルダン方面からドイツ軍を撤退させるという戦略目標は未達成で双方痛み分けという状態で戦線は膠着化。
フランス軍は遅れていた残りの機甲師団創設に尽力し、ドイツ軍はオーベルシュレージエン突撃戦車を5cm砲への換装とエンジン強化、装甲厚の増強を行っていくこととなる。
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