ウェルダン要塞攻防戦!
戦争開始から3週間が経過し、西部戦線は膠着していた。
戦争開始から動いたのはベルギー国境までで、ドイツ軍は初期の戦争計画が失敗し、長期戦へと移っていく。
フランスは幻想会が国家総動員をした場合かつ長期戦になった場合に備えた戦略物資の備蓄や中立国のスペインを経由した補給ルートの構築に余念が無く、3年間なら長期戦に耐えうる配給計画や生産計画を構築していた。
しかし、ドイツには長期戦を想定した計画が無く、長期戦となった場合生産効率が大幅に低下する危険性が強まっていた。
更にイギリス海軍とフランス海軍がドイツに向けた物資の海上封鎖を実行しており、食糧自給率が80%しか無いドイツは飢えが始まる可能性も懸念され始め、急いで長期戦を想定した戦争計画が立てられていた。
そのためドイツ軍は新型戦車の開発する力が低下してしまった。
一方でドイツ軍の戦車に衝撃を受け、多大な被害を受けたロシア軍はフランスから戦車を輸入して戦車開発を本格的に始めていた。
またロシア軍は18万人の兵数を失ったのにも関わらず、戦力を早急に立て直し、次の攻勢計画を立てていた。
幻想会の戦車開発を進めている部門でシャルル含め集まっていた。
今後のフランス軍の戦車開発の方針を纏めようという会合が開かれていた。
現在のフランスの企業はそれぞれで戦車開発を進めている感じであり、史実のイギリス、ソ連、アメリカ戦車の性質を持っていた。
「将来的にはソ連の傾斜装甲、アメリカの生産性と居住性、イギリスの万能性を得れる事を目的としている……ドイツ戦車の様に生産性を犠牲にして怪物戦車を作るつもりは無い」
「そうだそうだ!」
「しかりしかり!」
カタログスペックだけ高い未完成の戦車より実戦で使える車両を1両でも作った方がマシである。
この場に居る戦車好きの面々はドイツ戦車が好きであるが、実際に作りたいかと言えばNOである。
「まず次に作る戦車はシェル3型エンジンを更にチューニングすれば300馬力までは上げることができる。燃費は落ちるが300馬力あれば第二次世界大戦初期の戦車くらいは作れるだろう……そうなった場合どの戦車を作るべきだろうか」
「技術的にはM4シャーマンが良いのでは無いだろうか」
「いやT-34を目指す方が良いのでは無いか」
両方傑作戦車と言える車両であり、アメリカが作ったM4シャーマンは拡張性が凄まじく、エンジンと大砲を換装することで場所によっては1970年代でも現役の戦車であり、生産性が異常とも言える戦車であった。
T-34はソ連の傑作戦車で走攻守のバランスが高水準で整っていた戦車である。
現在ルークマーク3を発展させていけばT-34に近くなるだろう。
「エンジン馬力を考えると傾斜装甲を採用しなければならない。生産性を考えるとシャーマンの方が良いが……」
「うーむ、T-34に行き着くと居住性能が」
「居住性能は車体を大型化することで解決するしか無いだろう」
結局のところ拡張性の高く、改造することで長く使える戦車にしようという話でまとまった。
ソ連系にするかアメリカやイギリス系のどちらにするかは見送られ、ルーク社はソ連系統を、シュナイダー社はイギリス系を、ルノー社はアメリカ系を研究し続けるというので纏まったが、PM社だけはとあるフランスで計画だけに終わった戦車が将来性を含めて高いポテンシャルがあるとして研究していく事となるのだった。
その戦車はAMX Chasseur de chars……AMX CDCと呼ばれる戦車であり、薄い装甲と大柄な車体により史実では計画だけで消えてしまったが、工夫すれば主力戦車に成りうるポテンシャルを秘めているとPM社は見据えていた。
会合が終わるとPM社はルーク社のシャルルにAMX CDCを一緒に作らないかと言われ、何か得れる物があるかもしれないと了承した。
PM社にはルークマーク4の増産分の製造を手伝ってもらう代わりにCDC戦車の設計をしていったが、快速戦車では無く主力戦車を見据えれば大柄な車体は大きな砲塔を載せることのできるポテンシャルを秘めている事が分かり、最初は75mm砲を搭載する方向で計画が進められていくこととなる。
ジョフルを総司令官から引きずり降ろす政治工作を幻想会は進めながら、新幻想会派閥の将校の階級や役職を引き上げる工作も行っていた。
ジョフルは今回のプラン17失敗の責任を現場に押し付ける形になり、50名近くの将校が更迭されることとなる。
そのため下から有能な将校達が引き上げられることになりフォッシュ中将は第一機甲師団から第6軍司令官に、ペタン大佐は少将に引き上げられた上で第5軍参謀に、ガムラン大佐は参謀本部付きとなり後任の第一機甲師団師団長には日本人からの転生者であるエバヤン少将が引き継ぎ、参謀等も転生者達で固めた。
また第一機甲師団の活躍で機甲師団の重要性が認識され、第五機甲師団までの創設が決定。
その中核将校達も幻想会所属の将校が占める事となる。
着々と陸軍が反撃のピースを集めていく中、ドイツ軍は出血作戦を発令。
相手よりより多くの出血を強いる事でフランスを屈服させようという作戦でウェルダン要塞を戦略目標に指定して、会戦が始まろうとしていた。
この情報は完璧に秘匿することに成功し、ドイツ軍の中央軍からの攻撃の察知に失敗し、指揮官の交代と重なったフランス軍は5万人近くの大損害を被るが、出血作戦に合わせて大規模投入された戦車はウェルダン要塞に到着する頃には奇襲性を失い、ウェルダン要塞各所に設置された要塞砲により撃破されていく。
しかし、ドイツ軍は対要塞の切り札であるビッグ・バーサを投入するが、フランス軍は砲兵隊を砲弾が飛び交う最中前進させて直射により14門中11門のビッグ・バーサを撃破することに成功し、ウェルダン要塞の破壊に失敗する。
ウェルダン要塞はフランス国民にとって軍事的象徴でもあるため失陥することが許されない為ジョフル最高司令は予備役を含めて戦力をウェルダンに投入する。
幻想会が恐れていた大規模な出血をウェルダン要塞攻防戦にてしてしまい、新設する予定の機甲師団の編成スケジュールにも大きな影響が発生。
出血量を何とか食い止めるべく幻想会は防御戦の達人であるペタン少将をウェルダン方面最高司令官にすることを幻想会の政治家達が要請し、大統領命令によって何とかペタン少将にウェルダン方面の指揮を握らせることに成功する。
しかし要塞はボロボロ、度重なる出血で部隊編成もぐちゃぐちゃになっていた為、ウェルダンを立て直すにはドイツ軍の注意を別の場所に引き付ける必要があるとされ、立て直した第一機甲師団を含めたフランス第6軍はルーベーという町での攻勢が始まるのであった。
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