オーベルシュレージエン突撃戦車ショック!
フランスでようやく150馬力の戦車に搭載できるエンジンをソミュア社が開発し、ソミュアV-6エンジンを無理くり動かしていたルノーB1戦車に換装したりし、ルークマーク1にソミュアV-6エンジンに換装して時速45キロまで走行時速を上げたりの改修を行ったルークマーク2が完成したりして順調に戦車開発が進んでいたと思っていた矢先、ドイツの軍事パレードで世界に向けて戦車を公開したのだが、その姿がⅢ号戦車そのものだった為に転生者達は上も下も大騒ぎとなった。
「ドイツにも転生者が!」
「情報を売った者がいるのでは!」
「諜報機関が引っこ抜いたか!?」
「Ⅲ号戦車を1913年に開発だと!」
「見るからに対戦車を想定している!」
「主力のルークマーク2の攻撃力ではⅢ号戦車を撃破できないぞ!」
「あのⅢ号戦車をパレードで既に50両確認できた。ということは数倍保有している可能性もある」
「機甲戦になると戦略が一変するぞ!」
特に軍と戦車開発をしていた企業は大きな衝撃を受ける。
ドイツがⅢ号戦車の開発に成功したとして話は進み、フランス軍はⅢ号戦車を撃破しなければならない事が確定した。
「ルノー、ソミュア、ルーク……戦車開発ができる企業を片っ端から呼べ! 史実のⅢ号戦車をベースに撃破できる戦車開発を企業利益度外視で行わなければならない!」
幻想会の緊急会合で史実のⅢ号戦車のデータを見ながらシャルル含めたメーカーは頭を悩ませた。
史実Ⅲ号戦車の初期型のスペックとして装甲厚は14mm、厚くても20mmで砲塔の一部が35mm、時速は整地で40キロ、3.7cm砲でも貫通力は30mmを超える。
流石にそこまで高性能と思わないがそれでも形はⅢ号そのものであり、戦車メーカーはそれを倒せる戦車を用意しなければならない。
現在フランスにある戦車はルークマーク2、ルノーB1、戦車カテゴリーにするのは少々無理があるがシュナイダー105mm自走砲も対戦車車両と言える。
どれも3.7cm砲の場合貫通するため重戦車として開発されたルノーB1は鈍重かつ機械的信頼性も低いし、今回のⅢ号ショックで1度も実戦に出ないまま失敗作の烙印を押されることとなる。
時速面で勝っているルークマーク2も装甲は22mmとⅢ号よりは分厚いが容易に貫通できるだけの装甲厚しか無いため新型の開発が求められた。
シュナイダー105mm自走砲だけはそのままの攻撃力でⅢ号戦車に榴弾を直撃出来れば撃破できるとされたが、ソミュアV-6エンジンへの換装で速度を上げなければ撤退が困難と結論付けられ、ドイツが更なる新型で重装甲の戦車を開発した場合榴弾では効かなくなる可能性やシュルツェン(追加装甲)を装着することで榴弾を防御する可能性を考慮して、新型の徹甲弾を開発しなければならなかった。
ルノー社の社員は1年と経たずに役立たずの烙印を押された事に憤慨したが、怒ったところで事実が変わることは無く、新型戦車作りに取り掛かる。
ルーク社でもルークマーク3の開発に取り掛かり、居住性を犠牲にするが傾斜装甲を取り入れ実質装甲厚を嵩増ししなければ現状のエンジンだと馬力が足りないと結論付け、更に重装甲の戦車に対抗するために50mm対戦車砲の開発をフランスの各大砲メーカーに依頼し、共同企画として50mm対戦車砲開発が始まった。
1914年の2月にはコンペが行われ、ルノー社、ソミュア社、シュナイダー社、ルーク社の4社が新型戦車を披露した。
ルノー社はルークマーク2を順当に発展したB2戦車を開発。
B2戦車は正面装甲厚を32mmまで増し、既存のルークマーク2の砲塔を50mm対戦車砲用に直したが、重量増加で時速と燃費が大幅に悪化。
最高速度は15キロ、行動距離も75キロまで低下していた。
ソミュア社はルークマーク2を突撃戦車仕様に改造し、砲塔を無くし、50mm対戦車砲を搭載した物を開発。
シュナイダー社は1から作り直し、転生者の入れ知恵か史実でイギリスのテトラークを模した戦車となり、当たらなければ良いとして装甲厚を機関銃で抜けないギリギリの10mmにまで削り、足回りを強化。
そのため加速はもっさりながらも1度速度が出れば整地だと68キロ、非整地でも50キロまで加速することができ、Ⅲ号戦車の側背面を取ったり、敵陣奥深くまで浸透することができる車両になっていた。
ルーク社はソ連のBT-SVを参考にし、ルークマーク2全面を傾斜装甲にし、砲塔を3人乗り砲塔に改良した物を提出した。
ルークマーク3は装甲自体は前面を20mm、側面を16mmと一部装甲を減らしたものの、全体が約45度から50度傾斜をしており、砲塔も八角形かつ、傾斜が取られており、全面において被弾した時に跳弾するように作られていた。
これのおかげで実質装甲厚は前面40mm、側面32mmに倍増しており、重量を抑えた事で整地最高速度を45キロ、非整地でも35キロを維持し、砲塔を大型化したおかげで機銃を設置できるスペースが増えた為に7.65mm重機関銃を砲の横に搭載し、乗員を5名に増やしたことで車長が戦車指揮に集中できる様になる利点があった。
コンペでテスト走行をした結果、ルノー社のは重量増加に足回りが悲鳴を上げてしまい、走行中にサスペンションが故障するトラブルが発生。
重量増加により修理するのも手間がかかるとして一番最初に脱落し、ソミュア突撃戦車は突撃戦車仕様で砲塔が無くなった分を前面装甲の増加でカバーしていたが、前に伸びた砲が塹壕を乗り越える際に地面に突き刺さるし、砲塔が無くなったことにより戦車の歩兵に対しての攻撃性能が著しく低下するとして選考から外れたが、砲を75mm短砲身にした上で榴弾を発射する戦車に改修できるのならば使い道があるとされ、ソミュア突撃戦車は再改修が命じられた。
最後まで残ったシュナイダー社とルーク社の戦車は両方に利点があるとされて採用に居たり、シュナイダー社はシュナイダーマーク1軽戦車、ルーク社はルークマーク3中戦車の名前が与えられた。
また更なるエンジン強化及び対戦車榴弾の開発を命じられ、ルノー社の1人負けの様な状況となるが、ルノー社の方は既存のルークマーク1とルークマーク2を対空戦車や戦車回収車、陣地構築重機に改造する案が提出され、それが通り、改造を任されるのであった。
ただでは転ばない大企業のルノー社らしい。
コンペが終わり2カ月の最終調整が行われ、4月よりルークマーク3中戦車とシュナイダーマーク1軽戦車の生産が開始され、5月には先行量産車両が軍に届き、今までの車両よりも洗練され、機敏に動き、50mm対戦車砲は榴弾も発射できるし、携行弾薬もルークマーク3は75発、シュナイダーマーク1は100発搭載できるため、継戦能力があがったとして喜ばれた。
またルークマーク3には砲塔を回転させるバッテリーから電力を分けてもらい車内でお湯を沸かすことができる電気ケトルを傾斜装甲で空いてしまったスペースに設置することで缶詰を湯煎することができるようになり、パスタも茹でれると好評だった。
後々にシュナイダーマーク1や他の車両にも湯沸かし器が搭載され、それが戦場で戦車車外に出る時間を減らし、被害軽減に役立ったという事になるのだった。
フランスが新型戦車を開発したという情報はドイツ諜報機関がまたも引っこ抜いたが、だいぶ無理をして量産にこぎ着けたオーベルシュレージエン突撃戦車には劣ると結論付けたが、傾斜装甲は有用であることが実験の結果判明したため、突撃戦車の前面に20mm50度の傾斜装甲を搭載し、実質装甲厚40mmになる改造を施すのであった。
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